嬉しいこと貯金「一虎くん、嬉しいこと貯金をやりませんか?」
千冬の家に住むようになって半年近く経ったくらいの頃、突然提案してきた。
「嬉しいこと貯金?なにそれ?」
貯金ってことは金を貯めるんだろうけど、嬉しいこと貯金とは一体どう言う物なのか。
「ルールはひとつ。嬉しいことがあった時にメモを書いてお金と一緒に入れるだけ。書く内容は何でも良いんです。良い天気だったとか、お客さんの対応が上手く出来たとか、嬉しいと感じた時に書くだけ。毎日じゃなくても良いんです。」
千冬はなんだか嬉しそうに見える。楽しいことを思いついた!というような子どもみたいな表情だ。
「……へぇ」
俺は、そんな嬉しいこととか無いんじゃね?と思いながら曖昧な返事をした。
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