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    hatori2020

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    hatori2020

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    合コンにきた禰豆子ちゃんと、若干チャラさのある童貞(ここ重要!)善逸。

    合コンは偶然じゃなくて運命少しくらいは我慢しようと決めていたけど、いざ席について合コンが始まるあの軽率な雰囲気になると、途端に限界がきた。
    「はーい、白状しまーす」
    善逸は軽いノリで手を挙げて、合コンメンバーの視線を集める。
    「実は、その女の子」
    その子を指さす。
    「俺の友達の妹で、小さい頃から知ってんの。で、さすがに俺も心穏やかでいられないのよ。だって、友だちがすげぇ大切にしてるの知ってたし、そもそもこんな所にきていい子じゃないしさ」
    「こんな所とか言うなよ、イツ。お前が今回は幹事じゃん?」
    イツと呼ばれるようになったのは大学に入ってから。気の抜けた語感が自分らしいと呼ばれるようになったし、そう呼ばれてもおかしくない緩さを作っていた。
    「ンなんだよねぇ。ドタキャンした子が代わりに連れてきたのがさ……。だから、今回は俺とその子抜けるよ。そうすりゃ人数合うだろ。わりぃな、今度埋め合わせするからさぁ」
    パンと拝むように両手を合わせて、申し訳なさそうに片目をつむってみせた。不満そうに唇を尖らせた女の子たちに微笑む。自分の顔の良さを善逸は知っていた。カッコイイよりもベビーフェイスで、母性本能をくすぐる系だ。こうすると大抵は許される。
    「ま、待って!善逸さん」
    友だちの妹がぴょんと背を伸ばした。長く伸びた黒髪が肩から滑り落ちて、柔らかく膨らんだ胸にかかる。少しだけエロい。…と、思うのは下心のせいか。
    「禰豆子ちゃんは黙ってなさい。あとでお説教だからね」
    めっと言うふうに可愛く睨んでおく。ホントなんでこんなところにいるのか分からないくらいに清純そう。合コンってなんか他のことと勘違いして来ちゃったんじゃない?
    「ちょっと待ってよ、イツ君。イツ君、帰っちゃうんでしょう? じゃあさ、次の約束ってことで連絡先交換しない?」
    「んー、いいよ。じゃあ、交換しちゃおっか」
    「ねえ、明日とかに連絡してもいい?」
    「早朝はやめてねぇ。俺、朝弱いのよ」
    女の子たちがクスクス笑ってスマホを取り出した。善逸と同じようにスマホを取り出すと、男のメンバーが禰豆子に近寄っていく。ちょい眉が跳ね上がる。
    「それじゃあ、イツが来ないときに、ねずこちゃんおいでよ。俺たちも連絡先交換しよーよ」
    「はあああ!? 何アホでバカで考え無しなこと言ってんの!? 禰豆子ちゃんはこういうのやんないの! 誰が連絡先交換させっかよ!」
    禰豆子を後ろに隠して、威嚇するように歯をむき出しにしていると女の子がスマホを揺らして「イツくーん」と、催促してくる。
    柔らかく目元をさげて女の子たちに振り向いたとたん、後ろから禰豆子に腕を引かれた。
    「だめ。善逸さんも連絡先交換しちゃだめ」
    「はあ?」
    なかなかの低音で女の子たちが返す。
    「わたしが善逸さんをお持ち帰りするの。友だちの妹のカードを使って善逸さんをお持ち帰りするから誰とも連絡先交換しちゃだめなの。ごめんなさい」
    勢いよく頭を下げた禰豆子に腕を引かれて、居酒屋の個室から引っ張りだされた。
    「外、行こ」
    ずんずんと禰豆子が外に向かっていく。後ろ姿だけだとどんな顔してるのか分からない。居酒屋の外に出ても、禰豆子の歩みは止まらない。冬の風が禰豆子の髪をなびかせる。そういえばまだお互いコートも着てない。
    「ストップ、禰豆子ちゃん」
    「あ、はい」
    意外にも素直に止まってくれた。
    「とりあえずさ、寒いからコート着ようよ。それから俺、送っていくからさ」
    「えと、あの……」
    コートを羽織りながら禰豆子がきょろきょろと辺りを見回す。
    「うん? どこか寄りたいの?禰豆子ちゃん、コンビニ?」
    「ううん、ラブホさがしてるんです。お持ち帰りしたらラブホに行くんだよね?善逸さん」
    「ぶ! いや、なんで!?」
    「だってわたしが善逸さんをお持ち帰りしたんだもの」
    「禰豆子ちゃん、意味わかってる?ラブホってただ寝るだけじゃないんだよ。禰豆子ちゃんは炭治郎の大切な妹だけどラブホなんかに行ったら、そんなのもう関係なくなっちゃうよ。そんなチャンス逃さないよ、俺は」
    「関係なくなって欲しいの。ちゃんとひとりの女の子として見て欲しい。チャンスなのは善逸さんだけじゃないよ。わたしだって同じ。ちゃんと全部わかっての、善逸さんのお持ち帰りだし、ラブホだよ。高校生じゃないよ。もうわたし大学生だもの」
    「……じゃ、まずはカラオケ行こっか」
    「……ラブホはおあずけ?」
    シュンとした禰豆子の手を握って、カラオケ店を目指す。腕時計をちらりと見る。
    「まさか。カラオケで禰豆子ちゃんをめちゃくちゃ口説き落として、彼女にしてからラブホだよ。覚悟してね。好きだってたくさん禰豆子ちゃんに伝えたかったんだから」
    ぎゅうと禰豆子が手を強く握ってきた。
    「わたしも……。善逸さんが大好きって言いたかったの」
    「…………。カラオケの前にキスしたくなった」
    繁華街ではじめてのキスなんてロマンチックじゃない。けど、路地裏で交わした口付けはどうしてか胸が痛くなるほどに浪漫にあふれていた。
    我妻善逸、女の子のはじめてお持ち帰りされちゃったお話と、竈門禰豆子、初めての合コンで初恋が実ったお話。
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