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    さらさ

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    さらさ

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    「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。

    #クロリン
    chlorin

    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。

    「嘘偽りない事が、リィン君への誠意だと僕は思うけどなぁ」
    「そうだよ、クロウ君はもっと素直になっていいんだよ」

    ジョルジュとトワの言葉に、クロウは俯く。分かっているのだ、そうである事は。偽らざる思いを伝えていいのならば溶かし尽くす程に思い知らせてやりたいのだ。どれだけ彼がリィンを好いているのかを。だが同時に理解しているのだ、自分がどれだけ傷付けてしまったのかを。だから戒めとして決めたのだ、遠くから幸せになっているのを見ているだけでいいのだと。

    「クロウ、君は案外生真面目だね」
    「おいおいゼリカ、自分で言うのもなんだがこんなに不真面目な奴世の中いねえぜ?」
    「アンちゃんの、言う通りだと思う」

    アンゼリカの言葉に、トワは賛同した。彼の本質はさり気無いフォローと気遣いにある。これ以上傷付かない事、それがクロウの望みだろう。それは三人とも分かっている。雁字搦めにされるまでに追い込まれるほど、そうしなければという意識が強いのだ。これを生真面目以上になんというのだろう。

    「まずはリィン君と話し合いなよ。君からの言葉を彼はずっと待っているんだろう?」

    ジョルジュの言う事は正論だ、だが出来ていたらとっくにやっているとさえクロウは思った。だからこれを曲げる訳には彼も行かないのだ。

    「今のままでいいんだよ。……最低な俺の事なんてそもそも忘れてりゃ良かったのに」

    そういったクロウの鳩尾にゼロインパクトが撃ち込まれる。彼は言葉で抵抗する事すら敵わないまま意識を失った。

     一方その頃、第六階層では。見兼ねた新旧Ⅶ組の女子たちがこぞって集まってパーティに入っては根掘り葉掘り聞く始末だ。リィンは隠すつもりなど毛頭なかった。自分の恋心を自覚していて、同じものをクロウが持っている。それだけで諦めない理由足りえるには十分だった。

    「寧ろ、貴方達なんでくっついてないのよ?」
    「クロウが頑ななのが悪い。寝てる間には告白できるくせに面と向かってはしてこないんだ。だからこちらから告白するなら起きている時にしろと言っただけだし」

    リィンは太刀を一薙ぎして壺を壊す。落としたアイテムを回収しながらラウラとフィーが話を続けた。

    「そなたら、もう学院にいた頃からべったりだったであろ」
    「ん。正直鬱陶しかった」

    言われてみれば、確かにそうかもしれない。Ⅶ組に入って来た後は特にクロウの行方を常に探していたような、そんな気さえする。だが第三者に指摘されるとそれはそれで気恥ずかしいものがリィンの中にはあった。

    「多分、クロウは自分が誰かの幸せに繋がるなんて想像もしていないんだ。立場とか含めると仕方ないのかもしれないけど。でも、それは違うんだってちゃんと知ってほしい」
    「あの、それならいっそクロウ先輩と距離を取ってみたらどうですか?」

    ユウナの提案に一同は首を傾げる。そして女子だけ集まって内輪トークをし始めた。

    「どうしてそう繋がるのですか?」
    「だって、リィン教官ってクロウ先輩の有無で大分態度変わりますよね?」

    それは確かに、と旧Ⅶの女子たちは思った。クロウが亡くなった後の彼がそれを証明している。五十ミラコイン一つで思い出して動揺してしまうような状態でクロウ無しに過ごせば自ずと態度へ出てしまうのは分かり切っているのだから。

    「それでいざ接触した時にクロウさんがどう思うかを確かめるんですね?」
    「なるほど。触れられない時間ほど二人の思いを焦がすものはないでしょうし」

    楽しそうに語るミュゼにため息をついて、趣旨そのものは間違っていない為肯定する。そうしてリィンを見やって、このまま探索を続ける事となった。第六、第七階層と攻略して《円庭》へ戻って来たリィンは他の面々とまたダンジョンの方へと潜ってしまった。クロウに一切声を掛けることなく、だ。

    「リィン君、クロウ君探しすらしなかったね」
    「ああ、いつもなら探すくらいはするはずだ」

    実際、件の男はベンチの上で蹲っているのだが。余程ゼロインパクトが効いたらしい。

    「……ああ、なるほどそういう事か」

    にやり、とアンゼリカは笑った。発案が誰かは分からないが、考えている事は分かった。そうともなればこのまま気絶させておく方がいいか、とリィンの探索班に加わったのだった。

    「ったく、ゼリカの奴加減ってもんを知らねぇのかよ……」
    「まあ、全面的にクロウが悪いんだから反省しなさい」

    数時間後、何とか復活したクロウは元凶に悪態づいたものの通りがかったサラにそう言われた。どうやら探索から戻って来たらしく、左右見渡したもののどこにもリィンは見当たらなかった。

    「あいつは?」
    「さっきからずっとここと階層行き来してるわよ。今は特務支援課とブライト家が一緒に行ったみたいね」
    「ったく、さっきからずっとだろ?いい加減休めばいいってのによ」

    リィンを除いたメンバーは交代で、行ったり来たり。そこにクロウが呼び止められる事がないのは、彼自身も不思議に思っていた。何かしただろうかと思ったものの思い当たる節しかなく、どれなのかがはっきりとしなかった。

    「あら、心配ならアンタがずっと一緒にいればいいじゃないの?」
    「……それとこれとは話が別だろ」

    確かに、片時も離れずにリィンといたい。それは本音だ。心配から来るものもあるが、一番は自分の中にある独占欲。例え同じ気持ちであろうと、リィンの持つものの方が純粋で綺麗なのだろう。クロウにはそれを穢す勇気は生憎持ち合わせていなかった。

    「リィンなら、もうとっくに大人よ。アンタが思っている以上にリィンには覚悟も度胸も据わってる。……嫌って程思い知ったんじゃないの?」

    ああ、そうだ。彼は心の中で肯定した。かつて、自分が《帝国解放戦線》のリーダーであった頃。いくら突き放しても追いかけてくる彼がどれほどの覚悟を持ち合わせたのか、《煌魔城》での戦いで嫌という程。そして未来を託そうとしても共に手を取る事を譲らなかった《第一相克》ではなおの事。

    「正面からぶつかってみなさい。フラれた時にはアタシが奢ってあげるから」
    「ったく、わーったよ!フラれたら絶対奢れよ!?」
    「はいはい」

    そう言って手を振ってるサラがなんと言ったか気付いていないのだ。――絶対あり得ないから安心なさい、と。

     何度目かの探索の後、リィンはまた戻って来た。さて次は誰と、と考えているとふとクロウと目が合った。そのまま目を反らそうとした瞬間、物凄い勢いで迫ってくる。逃げようと身を翻したものの、出遅れた為にそのまま腕を掴まれてしまった。

    「……どうしたんだ?クロウはカンストしてるから連れて行かないぞ?」
    「そう言う事が言いたいわけじゃねぇよ。ちょっと付き合え」

    そう言って腕を引くと、《円庭》の端の人気のないところまで来る。辺りを見回して、深呼吸するクロウに、リィンは首を傾げた。

    「リィン、面と言えば返事をくれるって言ったな?」
    「え?ああ。あの話か。もちろんそうだが」
    「好きだ、学院にいた時からずっと。だから付き合ってくれ」

    反らす事の許されない、意志の強い紅の瞳がリィンを射抜く。それに安堵して、花が咲くように微笑んだリィンは、ずっと待ってたという。

    「俺も、好きなんだ。クロウ、だから……よろしくお願いします。それから一発殴らせてくれ」

    余りにも遅すぎた告白に、リィンはとっくに限界だった。その後響いた打撃音は、痴話喧嘩として処理され後に『付き合ってもないのに犬も食わない事件』として語り継がれるのであった。

    END
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    さらさ

    CAN’T MAKE多分もう書かないと思われるオメガバースランロイの序章を見つけたので私のメンタル維持のためにあげておく

    バース性関係なく一緒にいたいαランディといつか来るだろう未来に諦めを抱いているβロイド


    このあとロイドくんがΩになっちゃっててんやわんやするんだろうなぁと思いつつも断念
     ずっと、思っている事がある。もしも自分がΩだったなら、この不毛な関係にも意味を持たせられたのではないかと。Ωとは第二の性にして産みの性。男女問わず妊娠し、出産する事が出来るのだ。そして対になる性、αと番関係を持つ事が出来る。俺には恋人がいる。ごく一般であるβの俺とは違う、約束された相手がいるはずのαの男だ。俺の心にどうしても惹かれたのだと言われるものの、俺には分かる。この関係にいつか終わりが来る事を。惹かれあう番に、俺が敵う筈もない。もし俺がΩだったとして、番になれるのなら。そんな叶いもしない願いを抱きながらいつか来る終わりに怯えながら今日も一日過ごすのだ。

     ずっと思っている事がある。もしも俺がβだったなら、愛している相手をこんなにも不安にさせなくていいのかと。言葉にはしてこないが、ずっと不安そうにしている事は気付いていた。恐らくそれは、俺の性に関係がある事だろう。俺が惹かれた相手はβだった。βというのは良くも悪くも普通で、実質第二の性がないようなものである。αやΩとは対極にいるような存在で、自分の意思で相手が決められる。俺達は結局フェロモンの匂いに充てられればいとも簡単に相手を変えてしまえるような最低な性だ、そんな相手と付き合っていられる精神性に最早脱帽だった。いつか運命やΩの匂いに充てられて今の恋人を捨ててしまったら。きっと俺は自分自身を殺したい程憎むだろう。仕方ないって笑うあいつの姿が目に浮かぶ。諦念を抱かせる位ならいっそ俺がβになるかあいつがΩになればいいのに。そんな叶いもしない願いを抱いて今日も一日人知れず怯えるあいつの背に歯噛みしながら過ごすのだ。
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    MOURNING閃Ⅰでの8月の自由行動日、例のイベントで香水の匂いが移ってしまった後の話
    無自覚だった恋心を自覚してしまうクロ→(←)リン

    いつか続きは書きたい
    『ラベンダーの誘い』

     その日の夜、話題になったのはリィンがどこかの女性に迫られて香水の移り香をつけて帰ってきたという事だ。発端は委員長ちゃんだったが、それは瞬く間に第三学生寮へと広まっていった。女性陣から詰め寄られているのを遠目に、匂いはラベンダーだったと聞いたことを思い出す。この近郊で、ラベンダー。そして今日は日曜日。そのピースが揃ってしまうと嫌でもあの魔女の姿を思い出す。全く、純朴な青年に一体何をしているのやら。からかいついでにリィンに近付いてみれば、確かに思い浮かべた人物が使っている香水と同じ匂い。曰く、彼女の使う香水のラベンダーは特殊なものだそうで。俺で遊んでいるというのを嫌でも分かってしまう。

    「いやぁ、まさかリィンがそんな風に迫られちまうとはなぁ」
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    正直、腹が立つ。その反応さえも面白がられているのだから、余計に。そこでふと、どうして自分が腹立たしく思ったのかを考えてしまった。ただの後輩、今はクラスメイト。お人好しで他人優先、自由行動日や放課後に何もしない彼を見たことはない。危ういバランスの上で成り立ついたいけな青少年、それだ 904

    さらさ

    MOURNING遅刻大魔王によるすったもんだクロリンがバレンタインデーにくっついて分校全体に知られるまで。ポイピク練習も兼ねてる舌先の魅惑


    「え、え~!?クロウくんにチョコレートあげてないの!?」

     トワの素っ頓狂な声が、第Ⅱ分校の食堂に響き渡った。七耀歴1208年、2月。もうすぐバレンタインデーだ、食堂やら寮のキッチンを貸し切っての菓子作りに女子生徒たちが浮足立っている。去年の同時期と言えばクロスベル解放作戦当日だ、直接参加した訳ではないとは言えど親しみある教官と生徒が参加するともなればムードもそれどころではなかった。実質、今年が初めてのトールズ第Ⅱ分校バレンタインデーである。男子生徒も一部落ち着かない様子ではあるが、それも今更と言ってしまえばそれまでなのだが。ともあれ、青春では割とお約束のイベントが差し迫ったことを踏まえ、生徒たちの押しに負けて食堂にやってきたリィンなのだが。

    「えっと、俺はクロウとは何もないですしチョコレートもあげてませんよ?」

    という言葉で冒頭に戻る。指し手であるミュゼでさえ予想外だったその回答に、誰もが頭を抱えた。この朴念仁め、は共通の認識であるが故に誰も口には出さないが。

    「で、でもでも!リィン教官はクロウさんのこととても好きですよね!?」

    ここでもユウナから容赦ない一 4406

    さらさ

    SPUR ME12月12日に出す予定の展示品を尻叩きとサンプルを兼ねて一章丸々アップ。こんな感じのクロリンの話が五感分連続していく感じです。シリアスが続きますがハピエン(にしてみせる!)

    ちなみにタイトルは全て「五感に関する部位のことわざ」を当てはめています。変わるかも。
    医者と味噌は古いほどよい リィンは《黒の工房》から救出されて以来、違和感に気付いた。《巨イナル黄昏》より前に感じ取れていた味が、分からなくなっていたのだ。一か月近く食事をしていなかったこともあり気付かなかったが、しばらく食べているうちにようやくその違和感に辿り着いた。原因は分からないが、相克に向かうこの状況で他の心配事を出来ればリィンは作りたくなかった。だから、黙っている事にした。――目に見えて減っている食事量を前に、既に全員が気が付いているだなんて思わないまま。

    「そういうワケでクロウ、よろしく」
    「いや待て、どうしてそうなる」

    セリーヌとデュバリィに足止めさせて始まる新旧Ⅶ組大会議。答えは出ているも同然だったが、それでも認識の擦り合わせが必要だと集まったのだが。驚く程分かりやすいリィンの事だ、擦り合わせる間でもなかったが。それが分かれば押し付ける先は一つしかない。フィーの直球な言葉にクロウは予想もしていなかった為狼狽えた。リィンは無自覚ではあるが彼に甘える。そしてクロウは彼が甘えてくる自覚はあれど甘えさせているという自覚はなかった。何も自分に持ってくることはないだろうに、それがクロウの言い分だがそれに呆れている様子もまた感じ取っている事もあって困っている。
    3129

    さらさ

    MOURNINGフォロワーさんのネタをサルベージした一品。二パターンのうちの一個。曰くフォロワーさん的にはこっちがお望みだったようなのでこちらを先にアップ。
    でも本当に様になるねこの男は。

    尚そんなに活躍していない偽名は、私の趣味です(特にローデリヒ)
    踊ってください、愛し君「あれが例のターゲットか」
    「そうみたいだな。さぁて、どうしてやろうか」

     帝国のとある貴族邸にて。一時期帝国とクロスベルを行き来していた偽ブランド商がこの屋敷にて開かれる夜会に紛れてどうやら密談を行うらしい。そこでクロウとリィンには穏便な形での取り押さえるという依頼が舞い込んできたのである。相談した結果、ターゲットが女性である事とクロウ曰く二人そろって見目もいい事から凝った変装は必要ないだろうという事になった。ただリィンの場合は顔と名前を知られすぎているので、一工夫必要だとクロウの手によって好き勝手され。ラウラやユーシス、時間が出来たからと顔を出したミュゼの審査を受けてようやく目的地に辿り着いたのだが。如何せん、そこまでの振り回されたこともあって少々疲弊していた。潜入捜査に男二人は流石に目立たないだろうかとは思ったものの、その手のプロから珍しい事ではないとのアドバイスをもらったので女装させられるよりはましかと腹を括った。
    1996

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    「えっと、俺はクロウとは何もないですしチョコレートもあげてませんよ?」

    という言葉で冒頭に戻る。指し手であるミュゼでさえ予想外だったその回答に、誰もが頭を抱えた。この朴念仁め、は共通の認識であるが故に誰も口には出さないが。

    「で、でもでも!リィン教官はクロウさんのこととても好きですよね!?」

    ここでもユウナから容赦ない一 4406

    さらさ

    DONEエア小話 リクエストが指定なしとの事だったので
    「何かで互いに対して不機嫌そうにしてるクロリンが戦闘でも息ピッタリな話」
    です。リクエストありがとうございました。
    「……なんか、今日のクロウ機嫌悪くない?」
    「心なしか、リィンさんの機嫌も悪いような気がしますね」

     真・夢幻回廊、第五階層。最前線で戦うクロウとリィンを遠目に、後方支援役のエマとエリオットはそんな話をしていた。いつもだったらベタベタと言っていい程に距離が近いのが、二人ではありえないほどの常識的な距離だったし先程から二人で一度もリンクを繋いでいないのだ。一体何があったというのか、二人の様子を観察するにしても普段は砂糖を吐きたくなるほどドロドロに甘く見ていられないというのが新旧Ⅶ組どころか特務支援課他遊撃士等々の面子が出した結論だった。下手をしたら馬に蹴られかねない。そんな甘さを微塵も感じさせないまま、次から次へと魔獣を伸していく二人には最早感心せざるを得なかった。

    「なんというか、喧嘩したのか?」
    「それはあり得るかもしれないわね。でも……」

    サブメンバーとしてついてきているガイウスとエステルの視線は少し離れたところで戦闘を仕掛ける二人に向けられる。リンクはエマがリィンと繋ぎ、クロウはエリオットと繋いでいる。ダメージを受けることなく終わらせてしまうので、あまり意味がないのだが。
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    さらさ

    MOURNING「何かあって不機嫌そうなクロリンが戦闘では息ピッタリな話」の続き。やっとくっつきます。
    付き合ってないのに痴話喧嘩は犬も食わない リィンとクロウの不仲騒動から数時間。第五階層の最奥まで回って《円庭》に戻ってきた面々は二人を除いて疲れ切った表情をしていた。余りにも不毛な痴話喧嘩、それでいて付き合っていないというのだから手に負えない。瞬く間にそれは広がり、新旧Ⅶ組は総出で溜息をつき、他の面々も事情を察したように苦笑いをしていた。一部生温かい目で見る者もいたようだが。

    「全く、本当にいいのかい?リィン君だって同じ気持ちを持っているのだろう?」
    「……あいつには悪いが、応えられるほど真っ直ぐじゃねぇんだ」

    テーブルを囲って、かつて試験班だった面々がクロウに詰め寄る。アンゼリカの言葉に彼は首を振った後、真剣に迫ってきたリィンの事を思い出す。構えば構う程、愛情と執着心そして独占欲が生まれ、その度にクロウは己を律してきた。果たしてそれは必要か、と。必要であるならばいくらでも利用できる。だと言うのに彼の場合はどうだ、根も真っ直ぐでたくさんの人から慕われている。そんな彼を利用するだなんて出来ないし、したくもなかった、これはフェイクでも何でもない本音であった。未だに《C》だったころの話も出してネタにするのは正直言ってやめて欲しいのだが。
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    さらさ

    MOURNINGフォロワーさんのネタをサルベージした一品。二パターンのうちの一個。曰くフォロワーさん的にはこっちがお望みだったようなのでこちらを先にアップ。
    でも本当に様になるねこの男は。

    尚そんなに活躍していない偽名は、私の趣味です(特にローデリヒ)
    踊ってください、愛し君「あれが例のターゲットか」
    「そうみたいだな。さぁて、どうしてやろうか」

     帝国のとある貴族邸にて。一時期帝国とクロスベルを行き来していた偽ブランド商がこの屋敷にて開かれる夜会に紛れてどうやら密談を行うらしい。そこでクロウとリィンには穏便な形での取り押さえるという依頼が舞い込んできたのである。相談した結果、ターゲットが女性である事とクロウ曰く二人そろって見目もいい事から凝った変装は必要ないだろうという事になった。ただリィンの場合は顔と名前を知られすぎているので、一工夫必要だとクロウの手によって好き勝手され。ラウラやユーシス、時間が出来たからと顔を出したミュゼの審査を受けてようやく目的地に辿り着いたのだが。如何せん、そこまでの振り回されたこともあって少々疲弊していた。潜入捜査に男二人は流石に目立たないだろうかとは思ったものの、その手のプロから珍しい事ではないとのアドバイスをもらったので女装させられるよりはましかと腹を括った。
    1996

    さらさ

    DONEリクエストより「クロリンで指輪交換」でした。指輪を交換した勢いで誓ってもらいました。場所が場所だけどね!

    リクエストありがとうございました!
    誓いの環をその指に「買って、しまった……」

     十二月もまだ初旬、たまたま帝都に出たという理由だけで散策して見つけたシンプルな指環。ああ、あいつに似合いそうだと思ってうっかり買ってしまった物だったがこれを渡せる程の関係でもないという事は彼――リィンも分かり切っていた。一応、お付き合いしている関係ではある。だが余りにも空白の時間が長すぎた事、戦後の事後処理に追われて時間が取れない事が相まってしまい未だ実感が湧かないのが現実であった。だからこれは余りにも早すぎるというもので。そっとコートのポケットへと仕舞ったのだった。

    「やべぇ、買っちまった……」

     同時期、別の男もまた同じ事をしていた。たまたま見つけた最低限の装飾しか施されていない指輪。ああ、あいつの指にはめてしまいたいだなんて思っているうちに買ってしまった代物である。お付き合いを始めてそろそろ三か月、今度こそ手を離さないと誓ったものの状況がそれを許さなかった。彼らは別々の場所で必要とされ、帝国内を東奔西走するような日々である。言ってしまえば魔が差したようなものだと、彼――クロウは思う。なんせ相手は天性の朴念仁で人タラシ、所有痕の一つや二つ残しておかねば相手が近寄ってくる始末だ。その状況に頭を抱えていたのは事実だが、かといってここまでするつもりはまだ毛頭なかった。
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    さらさ

    SPUR ME12月12日に出す予定の展示品を尻叩きとサンプルを兼ねて一章丸々アップ。こんな感じのクロリンの話が五感分連続していく感じです。シリアスが続きますがハピエン(にしてみせる!)

    ちなみにタイトルは全て「五感に関する部位のことわざ」を当てはめています。変わるかも。
    医者と味噌は古いほどよい リィンは《黒の工房》から救出されて以来、違和感に気付いた。《巨イナル黄昏》より前に感じ取れていた味が、分からなくなっていたのだ。一か月近く食事をしていなかったこともあり気付かなかったが、しばらく食べているうちにようやくその違和感に辿り着いた。原因は分からないが、相克に向かうこの状況で他の心配事を出来ればリィンは作りたくなかった。だから、黙っている事にした。――目に見えて減っている食事量を前に、既に全員が気が付いているだなんて思わないまま。

    「そういうワケでクロウ、よろしく」
    「いや待て、どうしてそうなる」

    セリーヌとデュバリィに足止めさせて始まる新旧Ⅶ組大会議。答えは出ているも同然だったが、それでも認識の擦り合わせが必要だと集まったのだが。驚く程分かりやすいリィンの事だ、擦り合わせる間でもなかったが。それが分かれば押し付ける先は一つしかない。フィーの直球な言葉にクロウは予想もしていなかった為狼狽えた。リィンは無自覚ではあるが彼に甘える。そしてクロウは彼が甘えてくる自覚はあれど甘えさせているという自覚はなかった。何も自分に持ってくることはないだろうに、それがクロウの言い分だがそれに呆れている様子もまた感じ取っている事もあって困っている。
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    さらさ

    DONEクロリンwebオンリーのエア小話より「内容指定無しの更紗が書いたクロリン」です。
    12月に不安定になっちゃうリィンが今年はしっかりしなきゃと思いながらクロウにメールすることから始まるシリアスクロリン。



    ランディが出てくるのは私の趣味です(書き分け難しかったけど楽しかった)
    慣れぬくらいならその腕に ――冬、か。リィンは仕事が一段落した寮のベッドで、バタリと倒れながらそう思う。《黄昏》が終結してから三度目になるその季節に、そろそろ拭えていい筈の不安がまだ心の奥底で突き刺さっていた。

    「流石に通信は女々しいかな」

    流石に三度目ともなれば慣れなくてはならないと、彼は思う。今は異国を巡りながら情報収集やら遊撃士協会の協力者やらで忙しい悪友を、年末には必ず帰ってくる優しい人を心配させない為に。開いたり、閉じたりしてどうも定まらない思考をなんとか纏めようとする。

    「今年は帰ってこなくても大丈夫だって、言おうかな……」

    移動距離だってそんなに短くないのだ、忙しい時間を自分に割かせるには余りにも勿体無さすぎる。そもそも、帰ってくるという表現さえ正しいのかは分からないが。導力メールで今年は帰ってこなくても大丈夫だという旨だけ書いて送信して、そのまま目を閉じる。通信を告げる着信音がやけに遠く感じながら、リィンはそのまま眠りについた。
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