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    くろねこ

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    くろねこ

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    転生ネタ。殆どの人間が前世の記憶を持ってる。が、呪霊も呪力も術式もない世界。タイトル通り五がほとんどの人間に興味がない話。まだまだ続く…

    周りに興味がない五・七海と再会

     平穏な世界。何がどうして、どうなったのか全く理解できないが七海は二度目の人生をそこそこ満喫していた。
     『二度目』というのには理由がある。七海は前世の記憶を持っていた。自分がどのように生き、どのような死を迎えたのか。夢かとも一瞬思ったのだがあまりにリアルで、鮮明度が高い。関わってきた人間の名をしっかりと覚えており、交わした会話などもそれなりに覚えている。
     前世の記憶を持っていたとしても、今の生活に何ら影響はない。むしろ社会に対する生き方を知っている分、それなりに楽な面の方が多かった。ただ、精神年齢と前世からの年齢を加算すると、現時点での同級生の付き合いは面倒でもあった。高いテンションに付いていけず、極力一人でいようとした。
     呪霊も視えず、持っていた呪力や術式もない……ただの一般人。死の危険が大きく減り、とても息がしやすい。知識と知恵をさらに蓄え、将来就くことのできる職の選択幅も広がった。もちろん、前世で一時的に勤めていた会社は選択肢に入れていない。
     会社が…上司が利益に関することを考えるのは当然のことなのだが、それが露骨すぎた会社の空気はもう味わいたくないのが本音である。
     労働はクソということを一番理解している七海だからこそ、就職する会社の選抜は厳密に…慎重に行うべきであると心得ている。それでも『呪術師はクソ』というストレスが一つ減っただけでも気楽なものだった。
    【呪術師】と一括りにしてしまっているが、個人に向けての言葉でない。詳細に言うならば【呪術界】に向けての発言。非術師が生み出した呪いを、呪術師が祓う。その代償は大きく、まさに死と隣り合わせだった。
     以前の自分の生き方に後悔があるかと言われれば……正直どう答えていいか分からなかった。やり直したいからと言われれば即答でNOと答える。しかし悔いがなかったわけでもない。言い表しようがない靄。
     相談しようにも適任者はいない。それにもう『過去』のこと。忘れることはできないが、いつまでも立ち止まり…縋っていても仕方ない。

     呪術高専時代に経験出来なかったキャンパスライフ。大人とも子供とも言い難い人間たちと馬鹿騒ぎすることはないものの、自分の時間を確保できる生活スタイル。午前の講義を終えて、午後は特に予定はない。本屋にでも立ち寄って気になっていた小説でも購入しようか頭を悩ませる。
     結局三冊の小説を買い、ついでにコンビニに寄ろうかと考えていると。

    「────っ」

     呼吸が止まり。一度止まった足。だが、次の瞬間には走り出していた。何故このような行動を取ったのか……七海自身も、分かっていない。

    「っ五条さん!」
    「っ!は…?ぇ……七海?」

     目立つ白銀。日本人男性の平均身長を優に超える長身。整った顔に飾られている、サングラス。
     忘れること自体が、難しい人物……存在。
     突然、前方を歩く彼を見つけ、決して細くはない手首を掴んで、名を呼んだ。七海が引き止めた彼も……かつての先輩でもあった五条悟も、七海の名を口にした。
     今世で……前世にて関わった人間と出会えたのは五条で二人目。一人目は、『今』も『昔』も同級生の灰原だった。

    「お……お久しぶり、です」
    「あー…うん。久しぶり…?」
    「…五条さんにも…前の記憶があるんですね」
    「まぁ……一応ね」

     記憶を持っているからこそ、五条は七海の名を呼んだ。今世にて、初対面である七海の名を。
     自分の奇行に呆れつつも七海は心のどこかで安心していた。積極的に探していたわけでない。探そうと思って簡単に見つけ出せるはずもないとやや諦めていた部分もある。
     こうしてたまたま…偶然見つけて、自分と同じように記憶を持っていること自体が、奇跡に近いのだ。

    「手、離してくれる?」
    「、すみません」

     自分が起こしている行動さえ、自分の理解が追いついていない。ハッと我に返り、握ったままの五条の手首を離した。

    「僕になにか用があった?」
    「…え……?」
    「いや、引き止めたの七海じゃん?用があったんじゃないの?」
    「…いえ……貴方を、見かけたから……」
    「変な七海。珍しいじゃん。お前が用もなく話しかけるなんて」

     違和感が、大きくなっていく。
     何でもない言葉のはずなのに……所々に棘を感じるのは自分の被害妄想なのだろうか。だが五条の表情は至って穏やかだ。僅かに透けたサングラス越しの瞳と目が合う。
     違和感と共に大きくなっていく鼓動。胸のざわつきを鎮めるべく……拭うべく、次の行動を起こさなければ…。そう、思うのに……カラカラに渇いた喉から言葉は出てこなかった。

    「もう行ってい?」
    「……ぁ、」
    「用、ないんだよね?本当にどうしたの?」
    「っ…あ、あの…」
    「うん」
    「五条さん……、この後のご予定って…」
    「んー?友達と待ち合わせ」
    「……………」
    「…本当に間に合いそうにないから行っていい?」
    「…連絡先を、教えてもらえませんか」
    「なんで?」

     枯れた声で。もしかしたら震えていたかもしれない。それでも五条がこの場から立ち去ればもう会えないような予感さえしてしまった。だから必死に言葉を探して五条を引き止めていた。しかし先約があるのならば己が我儘を通すわけにはいかない。
     だから。だからせめて連絡先を交換しようと考えたのだ。……それなのに。

    「必要なくない?僕は別に七海に用事はないし」

     先ほどから、変わらない表情で。五条は七海を拒絶した。もし。五条の表情に嫌悪感や苛立ちなどが乗せられていたのならば『自分とは繋がりたくない』と無理に結論付けることができたのに。
     けれど。五条は、本当に七海が提案した内容を理解出来ていないようだった。まるで子供が親に分からないことを聞くように。無垢な心情を、そのまま表したかのように。心底不思議そうに、七海に問いかけ返した。
     あまつ…必要ないと、ハッキリと言葉を繋いで。

     じゃ、本当に時間ないから。と五条は放心する七海を気にかける事なく背を向けて歩き出してしまった。追いかけることさえ、出来なかった。
     『前』は、数分の遅刻の常習犯だったのに。ヘラヘラと人を煽って。全てを自分で背負って。用もないのに絡んできて、人を苛つかせて。周りに期待させるような言葉を吐いておきながら、誰も信用していなかった人物。誰も彼に敵う者はおらず、孤立しているように見えた。
     生まれ変わったところで。前世の記憶を所持しているのなら以前と変わらない態度…性格だと…勝手にそう思い込んでいた。
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