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    acocco1111

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    acocco1111

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    バレンタインプロペシです

    #プロペシ
    propeci

    bittersweet day 隣室からの騒音の合間に呼び出し音が鳴る。「……やっとか」とボヤきながら応答すれば、半ばキレ気味の声が響く。

    『足止め完了だッ!さっさとヤれッ!』

    「ディ・モールト、ギアッチョ。あんたにしては時間掛かったなぁ」

    『うるせーぞッ!やらなくていいことわざわざやってンだからよォ!早く終わらせろッッ!』

    一方的に吠え『今からそっち戻るぞ!』と伝え電話は切られた。さて、と立ち上がったメローネは隣室へと移動する。

    「ペッシ、そのまま監視頼むぞ」

    扉を閉めたメローネには目を向けず「分かった」と短い返事をしたペッシは、カーテンも掛かっていない小さな窓から外を眺める。とある一室の扉がギアッチョによって施された氷で塞がれている。

    (そういや、3人で任務なんて初めてだなぁ…)

    ペッシがそんな事を考えているうちに、ギアッチョが姿を見せた。隣室で騒がしくしている様子に舌打ちをしながら、ドカッ!とペッシの隣へと座り込んだ。

    「まだやってンのかよ」

    「ベイビィは生まれてるっぽいけど」

    教育中じゃあねーかな、という返答にギアッチョはまた舌打ちをしたが、ペッシと一緒になって氷漬けの扉を眺める。
    程無くして、メローネも隣室から2人の元へ合流し「良い子が出来た」と上機嫌で報告をする。2人の隣に胡座をかいて親機で色々と指示を出し始めた。

    「……報告書も3人で書くからな」

    つまらなそうに頬杖をつくギアッチョから発せられた言葉に、メローネとペッシは同時に「え~~」という抗議の声を上げた。

    「ったりめーだろ!自分がやった仕事ちゃんと覚えてろ!」


    ペッシはともかくとして、メローネとギアッチョには1人でも容易に遂行出来る任務を「3人でやってこい」とリゾットから言い渡された。ここ最近は案件が極端に少なかった為、少しでも報酬の足しになるように振り分けた。という説明だけだったが、ペッシを除く2人は別の意図を汲み取っていた。

    「要するに誰と組んでも仕事が出来るかどうかを見てーんだろ」

    「そういう事だろうな」

    ただのシマ荒らしのチンピラ1人を消すのに、ギアッチョ主導で作戦を立て、わざわざ3人がスタンド能力をきちんと使う方向へと算段を立てた。ペッシがターゲットの血を手に入れ、ギアッチョが足止めをし、最終的に仕留めるのはメローネ、と。正直、任務を受けてから面倒な事この上無い。とそれぞれが感じている。

    「リーダーそんなこと言ってなかっただろ?」

    ペッシの間の抜けた返答に2人は「はぁ」とため息を吐く。

    「察しろよ、そーいうのは」

    「ピンチになった時もダラダラ説明求めるタイプか?」

    2人から苦言を呈されたペッシは少しムッ…としながら「言ってくれた方が分かりやすいじゃあねーか」と言い返すが、それに「あぁ~~」とメローネが意地の悪い視線を寄越す。

    「いちいち"兄貴"が教えてくれるもんな?1から10までキッチリな!」

    「……兄貴はオレに分かるように教えてくれてンだよッ!」

    売り言葉に買い言葉。3人は腹の虫の居所が悪いのは自覚してはいるものの、それを各々抑えてきた。こういう時、意外と冷静になれるギアッチョは「やめろ」と制止をするが、段々とヒートアップしていく。口の立つメローネに追い詰められるペッシは「うっ…」と言い詰まり、口喧嘩は説教へと変わっていった。
    見かねたギアッチョが「ターゲットどうなってンだ?」と聞けば、メローネはその勢いのまま「とっくに終わってるに決まってるだろ!」と返してしまった。
    「早く言えッッ!ボケッ!」と完全にキレてしまったギアッチョも参戦し、しばらく3人は不毛な言い合いに終始した。
    何とか仕切り直し処理を終えたが、雰囲気は最悪なままアジトへと戻った。

    ガリガリとペンを走らせるギアッチョをリゾットとプロシュートは何も言わず観察し、その横でむすくれたメローネとペッシは黙りこくっている。一通り仕上がった報告書を「確認しろ」と投げて寄越されたメローネは読んでいるのかいないのか、サッと目を通しただけで「これでいい」と放り投げた。

    「オメーよォ~~……ペッシにも確認させろ!」

    「……ほら、ペッシ。プロシュートにでも読んで貰え」

    カチン!ときたペッシはメローネから報告書をひったくり、同じ様にペラペラと捲っただけで「これでいいよ」とギアッチョに突き返した。急に名前を出されたプロシュート本人はピクッと片眉を上げただけで、特に意見はせず静観している。
    リゾットも特に諫める様なことはせず、報告書を受けとると解散を命じた。



    行きつけのリストランテでプロシュートと共に早めの夕食を取るペッシは、すっかり落ち込み手は止まっている。

    「下らねー言い合いをいつまで引き摺ってンだ」と叱られたが、実の所、もう2人には腹は立っていなかった。ただ、言われた事が頭をグルグルと回り続けている。図星の連続だった。

    いつまでプロシュートに付いて回るつもりだ?
    一人立ちする気はあるのか?

    ペッシにもその言い分はよく分かっている。常にプロシュートへの任務に同行し、足を引っ張る事の方が多い中、おこぼれ程度の報酬を受け、衣食住の世話まで見て貰っている。
    「お前ならやれる」というプロシュートの期待に応えたいとペッシなりに足掻いてはいるが、なかなか結果に結び付かない。それとはまた別に漠然とした不安があった。
    以前、プロシュートに何気無く聞いてみた事がある。

    「オレが1人でも任務をこなせるようになったら…兄貴のとこから出なきゃ、っスよね?」

    「そういうのは1人でこなせるようになってから心配しろ」

    尤もな返答にペッシは閉口したが、聞きたかった本質はそこではなく。いつも確認したくても出来ない事がモヤモヤと胸を占める。
    「オレ達って恋人ってヤツっすよね」とストレートに聞いてみたいと常々思っていた。一緒に暮らして、体の関係もある。お互いを想い合っているとも感じるし、そんなやり取りも持っている。
    ただ宣言や告白をしていないだけで、何となく今の形に収まった。
    暗殺という仕事をしているからといって、刹那的に生きている訳でもない。
    ペッシは、自分が一人立ちをしてプロシュートの元から巣立てば、この関係も終わってしまうんじゃないかと気を揉んでいた。仕事をこなせるようになるのが先だとは理解していても、寝しなにプロシュートの体温を感じる度に「これが終わってしまうなんて」と苦しくなる。だからと言って、いつまでもこのままで期待を裏切るような事になるのも苦しい……そんな堂々巡りで答の出ない不安が日に日に増していくばかりだった。




    翌日、ギアッチョから「報告書の直しがある」と連絡を受けたペッシは、非番であるプロシュートを置いて家を出た。急な事にワタワタと支度をしている際に何事かを言われたが、話半分に返事をしアジトへと急いだ。
    1日過ぎたことで全員が冷静になったのか、ギアッチョがペッシへ時系列を辿り確認するのを聞きながら、メローネは静かにラップトップのキーボードを叩く。もう3人の中では昨日の小競り合いは解決している。
    改めての報告書は小一時間ほどで完成し、一息吐く。

    「昨日よォ~」とギアッチョが不意に口を開き、深夜にホルマジオから面白い話を聞いたと話し出した。
    まだ暗殺チームが過渡期な頃、方向性がまとまらずによく言い争いをしていたらしく、リゾットとプロシュート、ホルマジオは殴り合いにまで発展することが1度や2度じゃなかったらしい。専らホルマジオは2人に巻き込まれるか、仲裁役だったらしいのだが。

    「何それ。見てみたいな」

    「兄貴暴れてそう~~」

    メローネとペッシは笑いだし、ギアッチョも「なぁ?」と一緒になって盛り上がった。通りで昨日は何も注意をされなかったわけだ、と理解した3人の、ほんの少し残っていた蟠りは解けていった。

    一頻り笑い合った後「なぁペッシ」とメローネは真剣な顔を向けた。

    「これからはプロシュートだけじゃあなくて、今回みたいに誰かに付いてみたらどうだ?俺達チームは元々ワンマンタイプだが…何かしら為にはなるだろ」

    今回、プロシュート以外と組むというのが初めてだったペッシはメローネの言わんとしている事は何となく分かった。
    「他の奴が面倒だって言うなら俺とメローネに付きゃいい」とギアッチョも賛同した。2人ともペッシの能力に文句など無く、あとはメンタル、最後の一押しだけの問題だと思っている。もしかしたらプロシュートへの遠慮が出ているかもしれないだろ?と説得が続く。

    ペッシは2人からの提案が純粋に嬉しかった。仲間と認められていることも自分を案じてくれていることも。
    しかし何も考えずに口を突いて出た言葉は2人を呆れさせるのに充分だった。

    「…兄貴と出来るだけ離れたくない」

    「呆れた」とメローネは素直に口に出し、ギアッチョも「公私混同って言葉知ってっか?」と詰める。
    ペッシは自身の膝に顔を埋め小さな声でポツポツと呟き出した。

    「…ちゃんと、兄貴の側で一人前になりてェ…今まで面倒見てくれてる兄貴の顔潰したくねェし…それに……オレ…」

    「兄貴が好きだから」とプロシュート本人にすら言ったことの無いストレートな言葉を洩らした。一気に興味の失せた2人は「あっそ」と話題を終わらせようとしたが、今度はペッシが食い付いてきた。

    「あ、兄貴、オレのこと何か言ってねぇ?」

    「知らねーよ」「聞いたことないな」

    まさか人前で、しかも仲間内の前であの兄貴が…とは思うペッシではあったが、何かしら自分の事を褒めていたり、好意があることを匂わせていたり……ほんの少しだけでもプロシュートにそんな素振りが無いかと2人にしつこく迫る。今までの不安が一気に爆発してしまったかの様にペッシの心は急に落ち着かなくなった。

    質問攻めにうんざりする2人は「本人に聞けよ」と言うが、ペッシはサッと顔を青くし「聞けるワケねーよ!」と喚く。

    「そんなつもりなかったって言われて終わったらオレ…」

    「そういう心配ばっかしてっから仕事に支障出るンだろうがよ!いっそ聞いて終わらせりゃあいーだろ!」

    たまらずキレたギアッチョの言葉と同時に部屋の扉が勢いよく開かれ、3人はピタッと動きを止めた。よりにもよってプロシュートがそこに現れた。
    「うわ…」とメローネは小さく洩らす。
    ペッシは赤くなったり青くなったりしながら、プロシュートの呼び掛けにも応じず、頼まれてもいない買い出しに行ってくると部屋を飛び出した。
    向かい側のソファに座ったプロシュートは煙草を取り出し吸い始めると、2人を交互に見遣り「あんまりイジメんじゃあねーよ」と釘を刺す。

    「イジメてねぇ。聞かれた事に答えただけだ」とギアッチョが然も心外だ!と抗議すれば、揺蕩う煙の隙間から鋭い視線が投げられる。

    「俺とペッシの方針に口を出すな」

    「出してねぇ」とまた抗議する言葉を途中で遮り、煙草を持った指をゆらゆらと揺らしながら「それから」と続ける。

    「俺達に"公私"なんぞ無いって覚えとけ」

    どこから聞いていたんだ…というメローネの質問には答えず、壁に掛かったペッシのコートを眺めたプロシュートは「このクソ寒いのに何やってんだ…仕方ねーな」と嬉しそうに呟く。

    「オメーらに預ける時にはちゃんと俺から話通してやるから心配すンな」

    もう1本ゆっくりと煙草を吸い終えたプロシュートはペッシの持ち忘れたコートを抱えアジトを後にした。
    ギアッチョとメローネはやっと肩の力を抜き、ため息を吐いた。

    「何をあんなに心配してんだよアイツは…『俺のもん』って言ってるようなもんじゃあねーか」

    「聞かないペッシも悪いし、言わないプロシュートも悪い。言わなくても分かるなんて幻想だ」

    「察しろ」と説教をした手前、ギアッチョは「そんなもんか~?」と訝しげな態度を取る。「分かっていても確認したいもんなんだろ」とメローネはカレンダーを指差し、今日が何日かと認めたギアッチョは「下らね~~!」とソファへ横になった。





    「寒ぃ~~…」

    コートを忘れて街に出てしまったペッシの体は芯から冷えていた。どこかで暖を取ろうにも、思い付く店は兄貴分と赴いた所ばかりだった。
    今日は兄貴と一緒に居たくない。
    そう過ることすら初めてだった。

    きっと兄貴は自分達の会話を聞いていて、顔を合わせたらこれからの事を話される。こういう事をうやむやにしない人だから。きちんと話せる自信が無い。きっとこの生活が終わっても兄貴は変わらず仕事上の仲間として接してくれるんだろうけど……
    ただ、あの口から、あの声で告げられるのが嫌だ。

    フワリと目の前に甘い香りが漂う。
    通りを見渡せるガラス張りのカフェからで、寒さも限界だったペッシはフラフラと誘われる様に入店した。
    店内は何故かカップル客でごった返しており、チョークで書かれたメニュー看板には「2/14」と表記されている。今の今まで気が付かなかった…と少しげんなりとする。
    今日だけのスペシャルメニューとしてチョコレートドリンクや菓子が並ぶのを、甘党であるペッシは嬉々として眺めていたが、急に空しくなり「エスプレッソ1つ」と最も苦手な飲み物を頼んだ。
    1人用の席など、通りに面したガラス張りのスペースだけなのだが、そこにも無理やりにカップルが陣取っている。ペッシは入り口から一番奥、繁った観葉植物が侵食しつつある席に座り、エスプレッソを啜った。

    (マズい…)
    付け合わせの甘ったるいクッキーですら相殺してくれない苦さと、舌にもたつく感触に顔を歪める。例え人が殺せるようになっても好きになれる気がしない。
    (兄貴から香るのは好きなんだよなぁ…)
    煙草もエスプレッソも苦手だが、キスを交わした時の残り香に「あぁ、兄貴だ」と思う瞬間はとても好きだ、と今までの色々な場面を思い出す。

    (今日はギアッチョのとこにでも泊めてもらおう。兄貴にどうやって話したらいいか相談して……またキレっかな~…)
    全く減らないエスプレッソを見つめながら、ぼんやりと考え事をしていると、頭上からコンコン、と音が鳴る。
    反射的に顔を上げれば、コートを抱えたプロシュートがガラスを挟んで通りに佇んでいる姿が目の前に飛び込んできた。
    「え」と固まったペッシへ向け、再びガラスをコンコンと叩き『出てこい』と口が動いている。

    (何でこんな時でも見つけちまうんだよ!)
    ペッシは思わず目を逸らしてしまった。
    出てくる気が無いと悟ったプロシュートはカフェの入り口へ向かい歩き出した。
    今はどうしても面と向かって話せる気がしないペッシは慌て、殆ど無意識にビーチ・ボーイの糸をプロシュートの手に巻き付け引っ張り上げた。
    ほんの少し足を止めさせるつもりが、引かれた手はガラスを強かに打ち、派手な音を立てる。店員や客はもちろん、通りを歩く人間も「何事か」と視線が集中する。端から見れば、いきなりプロシュートがガラスを叩いた様に見えてしまう。

    プロシュートは特にリアクションはせず、オロオロするペッシと手に巻かれた糸を見ながら『出てこい』と繰り返した。真っ青になりビーチ・ボーイを引っ込めようとすると、プロシュート側からクッ、と引っ張られた。
    『そのまま』と伝えられたペッシは仕方なく入り口へと移動する。1枚ガラスを挟んで繋がっている糸を、客に引っ掛けない様に注意しながら進めば、プロシュートも同じく外を移動する。

    「ご、ごめん兄貴…」

    ペッシはすぐさま謝ったが、その肩にコートが掛けられ「帰るぞ」とだけ返された。まだビーチ・ボーイを解除するなと言われ、結局家へ戻ってからも2人は繋がれたままだった。

    「今朝俺が言ったこと忘れてンのか?」

    そういえば、出掛ける際に何か声を掛けられた…と思い返すペッシだが肝心な言葉は思い出せない。

    「今日は早く帰って来いっつったろ」

    そう言いながら、いつの間にかプロシュートの手には冗談みたいな真っ赤な薔薇の花束が抱えられていた。戸惑うペッシに「ほら」と渡し、花束ごと抱き締める。

    「え?何でェ?オレに?」

    「当たり前ェだろ。今日何の日だ」

    それからプロシュートは「Ti amo」から始まり、様々な愛の言葉をペッシの耳元で囁いた。上手く働かなくなってくる頭をフル回転させ、ペッシはずっと聞きたかった事を聞かなければと言葉を探すが、囁きはなかなか止まってくれない。
    「あの、兄貴…」とようやく紡ごうとする瞬間に、更に力を込めて抱き締められる。

    「離すな」

    ワケが分からなくなっているペッシは、とりあえず「う、うん…」とプロシュートの背中に腕を回す。

    「オメーが一人立ちしても俺を離すなよ?」

    やっぱり会話を聞いていたんだと理解するのと同時に、オレから兄貴を離すなんて事あるもんかと強く抱き締め返す。
    2人に挟まれたせっかくの花束はクシャクシャになり、花弁が床に散らばってしまっている。

    「聞きてーことあるンだろ?」

    「ん…、もう聞かなくても大丈夫」

    キスの合間に交わす会話にペッシは今日の日の意義を理解した。
    きっと皆、確認したい日なんだ。
    この日に託つけて恋人達は確かめ合う…オレ達もそうなんだ。

    「もう解除してもいいぞ」と言われたが、ビーチ・ボーイの糸はそのままにしている。プロシュートの手に絡み付く糸は何重にも雁字搦めになって、これが現実の物ならば解くのは困難だろう。
    離すなって言ったの兄貴だろ、と生意気を言えば、そのまま寝室へと連行された。
    「意識吹っ飛ばさない様に頑張れよ」とプロシュートはペッシの身体をまさぐり始める。キスをしようと顔を寄せれば、今では少し唇を開いて迎え入れようとする。この慣れ、この空気の感覚、これが恋人以外の何だと言うんだとプロシュートは思うが、自分達にはそれ以外の関係性もあり一言で表すのはとても難しいと感じる。

    「離すな」という一言はペッシが思っているよりもずっと、プロシュートの切実な願いだ。

    「オレ、何も用意してなくてごめん」と行為に翻弄されながらもペッシが謝る。「…来年期待してる」と黙らせたプロシュートは、ペッシの顔の横に置いた自身の手の甲に残る、糸のうっ血痕を見ながら微笑む。

    最初は地味な方がいい。


    ほろ苦い味が甘い痺れに変わっていく。
    2人の恋人としての初めてのバレンタインは、こうやっていつものように体を重ねて、いつの間にか終わっていた。




    おわり


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