キスから始まる萩松(大学生編)幼い頃に見つけたふたりだけの秘密の場所。丘を登ると開けた場所に出て視界を遮るものがなくて、花火が綺麗に見られるとっておきの場所だった。途中、整備されていない道を通るのでこんなところまでわざわざ来る人はいない。
地元の花火大会でのいつもの所といえばここだった。だが、もう、ここで一緒に見るのも最後だろう。
「萩! ちょうど花火始まったみてぇだぜ」
タイミング良く、花火が始まったようだった。空を見上げて、よく見える場所を探して腰を下ろした。
次々と打ち上げられる花火があの頃より小さく見えるのは自分たちが大きくなったからだろうか。昔から変わらず夜空に咲く大きな花。そして、それを見つめる想い人も目に焼き付けておきたかった。
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