あの頃の僕ら(人事ファイル) 長く続く恋人になんて、なるとは思っていなかった。浅い恋人同士のまま終わると思っていた。狡噛に公安局の適性が出て、俺も同じく適性が出た時、もしかしたら、と思った。このまま不安定な友人のまま終わるんじゃなく、先があるんじゃないかって、俺は思ってしまった。しかし俺は不器用な人間だったから、例えば恋人たちがするようなことは分からなかったし、友人より先に進んでも面白くない人間だったと思う。けれど狡噛と長く一緒にいたら変われて、彼に相応しい人間になるんじゃないか、そう思ったりもしたのだった。
だから最終考査が終わったあの頃の俺たちはとても不安定で(主に俺がそうで)、公安局の訓練に体力を使い尽くしていた時なんてほとんどやり取りをしなかった。俺たちの時代は数人に監視官の適性が出た珍しい時代だったらしい。だから訓練教官は喜んで俺たちをしごいてくれた。そのおかげで、俺は狡噛を思う時間すら失ってしまったのだけれど。
1072