「はな……??顔のこと??」
フロイドは上を見上げながら声を上げていた。
不思議そうに見つめているフロイドに、ジェイドはにこりと笑いかけながら声をかける。
「いいえ。あの、頭上にある桃色の物体です。」
そう言ってジェイドは自分たちの頭上にあるものを指差す。
指を指した先には、茶色の太い柱のようなものから桃色の小さい布のようなものが垂れ下がっていた。
「ふぅん?」
フロイドは更に不思議そうな顔をしながら、それをまじまじと見つめる。
首を傾げたかと思うと、ふとぱっと顔を明るくさせる。
そして思いついたように声を上げていた。
「サンゴみてぇ〜〜!」
「!」
その言葉を耳にした途端、ジェイドは軽く目を見開いていた。
そして感嘆の息を漏らしていた。
「ふふ」
「何笑ってんだよ。」
フロイドは不平そうに顔をしかめる。
どうやら己の反応の意図が上手く伝わってなかったようだ。
フロイドの機嫌を損ねるのは本意ではない。
ジェイドはすぐさま訂正を入れる。
「いえ。馬鹿にしたのではなく、フロイドは僕たちに馴染み深いものに例えるのが得意だと感心していたのです。」
「ふぅん?」
ジェイドがそう弁明するも。
フロイドは疑うような、だがどこか得意げなような、それらが入り交じった声をあげる。
そして次の瞬間。
ヒラヒラと『花びら』が頭上から二人の間に舞い落ちる。
そして、それはフロイドの尖らせた口の上にふわりと乗っかったのであった。
「おやおや」
ジェイドは眉尻を下げながら、指先でちょいと花びらを摘む。
すると柔らかい弾力が彼の指を弾き返す。
「っ」
フロイドのふっくらとした唇の感触と体温がジェイドの指先に伝わり、チリッと熱が発生する。
カッと欲求が煽られ、瞬間的に高熱に浮かされる。
そしてフロイドの方へ欲望のまま手を伸ばし、頭をぐっと引き寄せる。
気がつけば唇を重ねていた。
心地の良い感触が、唇の上にふわりと広がる。
互いの息遣いが鼻に当たる。
「ふっ……」
途端にゆっくりと熱が身体中に広がっていく。
春の麗らかさを感じる時期になってきたが、まだどこか肌寒くも感じるこの季節。
しかし身体の芯からぽかぽかと温まっていく心地がする。
「ん……」
頭を傾けると、角度が変わり交わりが深くなる。
内部の生暖かいぬるりとした感触が口内に入り込み、欲を煽られる。
無意識に口は開き、歯列をなぞる。
くちゅくちゅと音を立てながら、唾液は絡み合っていく。
更に熱は上昇していき、互いに溶け合っていく心地になる。
「ふっ、ん……」「ん、ん……」
心地良さと快感とでふわふわしていき、顔は火照っていく。
だが、同時に酸欠からか胸が苦しくなっていき、自然と口を離していた。
そして目を開き、互いの姿を視認する。
するとフロイドはジェイドを指し、続いて下を指す。
そしてにぱっと笑うとこう言い放つ。
「同じ色じゃん!」
つられてジェイドも、フロイドのような笑みを返す。
「フロイドこそ。」
そう笑い合う二人の頬は、辺り一面に広がる花びらの絨毯と見紛うばかりの色に染まっていたのであった。