後悔隣の安定した寝息を乱さないように、俺はそっと身を起こした。
そのまま、洗面所に向かう。そこには当然、いつもの我が家の洗面台が鎮座していて、鏡には、僅かに無精髭を生やした寝起きのおっさん────つまり、俺の姿が映っていた。
いつもと何ら変わらない光景だ。幾度となく迎えた朝を、今日も同じように迎えた。
そう思えば、少しは落ち着くと思っていた。
────── しかし。
腰の痛みと身体の怠さは、否応が無しに昨晩のことを思い出させる。昨晩のことを思い出せば、景気良く寿命を燃やすような勢いで、心臓は暴れ回った。
「あ〜〜…………………」
昨日の夜、ついに俺は、モブと一線を越えた。衝動的でもなく、一方的でもなかった。
ずっと前から諦めていて、選ぶまいと決めていた道に、あいつは俺を引き上げようと根気強く手を伸ばし、俺は散々渋ったその後に、結局あいつの手を取った。
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