居心地の良い一日にするために「晃人、ほら。誕生日ケーキよ。いちごと生クリームがたっぷりのケーキ。おいしそうでしょう?」
ご馳走とケーキを食卓に並べるお母さんは上機嫌で、歌うように僕に語りかけた。当の僕は「そうだね」と頷いたけれど、知ってるとは言えなかった。お母さんは僕を喜ばせようとして手を尽くしてくれているのに、そんなことを言ったら傷つくと思ったからだ。でも、僕はホールケーキよりもワンカットのケーキで充分だし、いちごのショートケーキよりも抹茶ケーキに惹かれるし、そもそも洋菓子より和菓子派だ。でもお母さんは、息子の誕生日にはハンバーグといちごのホールケーキと決めていて、それが普通だと思っているから、僕もそれが普通だと思わざるを得なかった。
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