イヌピーが女装する話 きっかけはコスプレだった。ハロウィンの行事のひとつとして、商店街をあげてコスプレをすることになったのだ。ドラケンもオレも金も時間もなかったし、衣装は三ツ谷に頼んでいた。デザイナーを目指している三ツ谷だったら、適当になんとかしてくれるだろうと目論んだのだ。オレたちの思惑は正しく、三ツ谷は衣装や小道具を持ってD&Dに来てくれた。
ここまではいい。問題は三ツ谷が凝り性だったことだ。長身でスタイルのいいドラケンは三ツ谷の格好の餌食だった。吸血鬼にされたドラケンは、同僚のオレの目から見てもかっこよかった。商店街の注目を集めること間違いなしだ。
「ここまでするひつようあるのかよぉ」
ご丁寧に爪を黒に染められ、牙までつけられたドラケンは、呆れているようだったが、自分の姿はまんざらでもなさそうだった。ドラケンはノリがよく、あそび心のある奴なのだ。
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