眼差しの温度 売店で購入したドリンクカップがゆっくりと口に運ばれていく。
狙いすましてシャッターを切れば、被写体から遠回しな指摘が入った。
「今日はシャチを観にきたんじゃないのかい」
ファインダーを覗き込んでいたシェーンコップは対面に座る人物へ視線を戻した。
園内の広場に設置されたガーデンテーブル。そこで二人は軽めの昼食を終えたところだった。夏の名残を思わせる南風がやさしく頬を撫でていく。
九月に入り季節は一気に秋めいてきた。テルヌーゼンの気候は首都星に準じているものの、ハイネセンより四季の寒暖差が明確である。
少しだけ高くなった空を見上げれば、青く澄んだキャンバスに刷毛で薄くはいたような雲が広がっていた。つい最近まで半袖で過ごしていたというのに、今では早晩肌寒く感じるほどだ。
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