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    藤 夜

    成人⬆️基本は夏五!書くのは夏五!!ほのぼのいちゃいちゃを日々妄想中^ ^

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    藤 夜

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    離反if 
    苦いのが苦手でも一緒にいたい悟と傑のカフェタイム。かわいい約束は日々の暮らしのささやかな幸せ
    GEGO DIG. SUMMERでpixivにて展示した短編集より

    #夏五
    GeGo

    【飴色】 カフェオレ 食に拘りがあるわけではないけれど、コーヒーぐらいはおいしく、と言うよりは、よい香りで弱い朝の目覚めもマシになると買ったものの、私にはハードルが高過ぎた。ぼうっとしている間に時間は過ぎ、結局ばたばたと慌ただしい朝のひと時だ。まあ、何となく、三日坊主で終わるだろうと、察しが付かなかったわけでもない。ただ、その後が、想定外だった。
    「傑、そろそろ起きろよ。遅刻する」
     昇ったばかりの弱い朝日を瞼に感じつつ、悟の張りのある声を夢現に聞いている内に、ぬくぬくとした極楽から、冷気に体を包まれた。掛布団を剥がされたらしい。
    「さむぅ」
    「傑、朝」
    「ん」
    「起きろよ、ねぼすけ」
    「ぅん」
     生返事をしながら寒さゆえにもぞりと動くと、再度、起きろよと言い置いて賑やかな気配が遠ざかる。かわりに微かに豆を挽く音に続いて、香ばしい香りが漂ってくる。
     そう、一瞬で放置されたコーヒーメーカーは、私の代わりに悟が使い、私のためのコーヒーを淹れてくれるのだ。驚きつつ用意されたマグカップに礼を言いながら口をつけること数日。そうなれば、一番初めに起こされるタイミングで起床出来るのだから、不思議だ。
     何でもそつなくこなす悟の手付きはしなやかで無駄がなく、いつまででも眺めていたくなる。ましてそれが、自分のために淹れてくれるコーヒーのためなら尚のこと。キッチンで立ち働く姿を、起きがけのぼさぼさ頭のまま熱心に見ているのは嫌がられるとわかっていた。見るとはなしに見ている、そんな様子を装いながら、ぼんやりとソファに腰掛けて眺めるのが、あたたかくて大切な時間となっていった。
     とは言え互いにありがたくも嬉しくもないことに、慌ただしい身の上で、毎朝顔を合わせられるとは限らない。悟がいない朝は、香ばしい匂いに包まれることなく、出勤することになる。代わりと言っては何だが、夕食後の一杯を飲んだところで、眠れなくなる心配もないので、片付け後に豆を挽けば、物珍しそうに悟が覗きにきた。
    「夜にコーヒー飲んで、眠れるの」
    「このぐらいなら大丈夫だよ。悟も飲むかい」
    「飲む」
     予想外の返事に、実はブラックも飲めたのかと思いながら、悟が用意してくれた色違いのマグカップに注いで、そっと並べて机に置いた。冷えた手先を温めるように、両手で包み込んで持ったマグカップを、熱いからとしばらく口元には運ばず、香りだけを楽しんでいた悟が、そっと口をつけると、一瞬苦そうに顔を顰めた。砂糖ひと欠けでは足りなかったらしい。それでも嬉しそうに微笑んだ表情は本物で、ふわりと牡丹が綻ぶようだ。
    「悟が淹れたコーヒー、旨い」
    「ありがとう。それじゃあ、また、明日も淹れようか」
    「おう」
     本当は苦いんでしょ、無理しなくてもいいよ。そう言おうと思ったのに、あまりに綺麗に笑ってくれるから、誘ってしまった。

    「はい、悟の分」
     そう言って悟の目の前に置いたマグカップの中は、琥珀色ではない。
    「あれ」
    「やっぱり寝る前だしね、カフェオレにしたよ」
     甘みの強い牛乳で淹れたカフェオレは、砂糖を入れなくてもとろりと甘くて、心にも優しい味がする。
    「んっ。こっちの方が、おいしい」
    「そう、よかった」
     嬉しくなってつい笑みが零れると、でも、と目の前で僅かに唇を尖らせた悟が続けた。あまりにかわいくて、諫める前に、そのぷくりと弾力性がありそうな唇を、指先でそっと突いてしまった。ぷにゅりと見た目通り、可愛らしい弾力が人差し指の先端から、全身に回るようだ。一瞬驚いた様子で肩を跳ねさせた悟は、何事もなかったかのようにその口で強請られた。
    「俺、傑と一緒のが、飲みたかったな」
    「それじゃ、次があったら、私もカフェオレにするよ」
     そんなかわいい言い方で強請られれば、ブラックからカフェオレに飲みたいものは一瞬でかわる。
    「また、明日も淹れてよ」
    「いいけど、明日は夜、任務が入ってなかったかい」
    「深夜になる前には終わるよ」
    「ふふ、それじゃ帰ったら淹れるから楽しみにね」
     そして、些細なカフェオレの約束は、ふたりが揃う日は恒例の約束となる。その約束は私のためでもあるのだろう。他愛もないけれど、それでも、多少の枷にはなるだろうと。いや、悟のことだ、純粋に楽しい時間を過ごすためなのかもしれない。
     ソファに並んで他愛もない話をしたり、テレビを観たりしながら、時折触れ合う指先だったり、肩だったり。交わり、絡んで、解けて、結び直す視線だったり。やわらかく繊細なぬくもりは、それは確かに、悟が隣にいると感じられる証であった。
     それだけで満ち足りた想いなのに、触れた指が絡まり、当たった肩がやがて寄り掛かり、その肩に腕を回すようになるかもしれない。それは、私が先か、悟が先か、心地よい時間より強く、気持ちより欲に近い想いにつられて、その内、触れ合う先が唇に変わるまでは、揺蕩うように笑い合って楽しい夜のひとときを過ごしていこう。きっと、その先にも楽しい時間が待っているだろうけれど、今はまだ、次の一歩に踏み出せないでいる臆病者だから、カフェオレ片手に笑い合おう。
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    藤 夜

    DONE生徒たちのクリスマス会からの、ふたりだけで、一緒に過ごす、しあわせな時間。
    離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    キヨシキョシ 悟視点 
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆五◆ 好き クリスマスケーキにシャンメリー、ケンタのチキンをメインにデリバリーのデリカが所狭しと並んでいる。悠仁と恵が飾り付けたのか、壁や天井に星を始めとした色とりどりのポップな装飾がなされ、楽しげな雰囲気満載だ。
    「先生も食べていけばいいのに」
     当然だと言わんばかりに声を掛けてくれるのは優しい悠仁ならではで、当然嬉しくもあるけれど、それはそれで少々困る時もある。
    「こういうのは学生だけの方が盛り上がるよ、ね、憂太」
    「ええっと、でも先生も」
    「気を遣うことないって。どうせこいつはさっさと帰りたいだけだろ」
     同じく優しさの塊と言いたいところではあるけれど言い切れない乙骨が、助けを乞うように視線を向け小首を傾げて微笑むと、隣にいた真希に、冷ややかな視線と共にばっさりと切り捨てられた。それでも目の奥が笑っているので、僕たちふたりの様子を見慣れた彼女たちは、またかと呆れているだけだろう。憂太に頷いて貰う前に角が立つことなく帰れるからいいけれど。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師if 伏黒視点 
    例年別々に過ごすイブを、珍しく伏黒姉弟と一緒にケーキ作りをする夏五のお話
    【雪が融けるまで725秒】にあわせて支部に掲載したお話より再掲
    ◆三◆ スカイブルー「それじゃ、僕と一緒に恵たちとケーキ作ろうぜ」
     故あって保護者の真似事のようなことをしている姉妹が私にはいて、毎年クリスマスには彼女たちと一緒にケーキを作ってささやかなクリスマス会をし、サンタクロースの真似事をしていた。それが今年は、
    「私たちだけで作ったケーキを夏油様に食べて貰いたいから準備ができるまで他所のお家で遊んできて」
     と言われてしまった。成長が喜ばしくもあり、寂しくもあり、ならば非常勤として働いている高専で事務仕事を片付けようと思っていた所に、悟に声を掛けられた。
     彼にも保護者と言うより後見人として面倒を見ている姉弟がいる。こちらはクリスマスに一緒にいても鋭い目つきで邪険にされるそうだが、それは表面上だけで、それなりに楽しんでくれているみたいだから、と毎年ケーキやらプレゼントやらを携えていそいそと出掛けていく。紆余曲折があった上でクリスマスは一緒に過ごしたい間柄になったにも関わらず、優先すべき相手がいることに互いに不満を言うことはない。私はそんな悟だからこそ大切だし、悟だって私のことは承知している。それでも世の浮かれたカップルを見れば羨ましくなるのは当然で、イブじゃなくてクリスマスに一緒に過ごすようになった。
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    藤 夜

    DONE離反ifのクリスマス短編集、テーマはキスのひとりアンソロです(笑)
    教師×教師 虎杖視点 
    クリスマスプレゼントにまつわる惚気のひと幕

    【雪が融けるまで725秒】の開催、おめでとうございます&ありがとうございます♪
    ひと足先にサンプルがわりに第1話を掲載します^^
    ◆一◆ 久遠「しょうがない、伏黒が迎えに来るまではここで寝てなよ」
     そう言って家入は空いているベッドを指差した。申し訳なさに仕事は、と問えば、
    「仕事納めはまだ先だから、私のことは気にしなくてもいいよ」
     積み上がった書類の奥で目元を細めて頷かれた。閉じたカーテンの向こう側にあるベッドに寝転ぶと、冷えたシーツが火照った肌に心地よく、横たわれば楽になった体に、疲れていたのだと実感した。
     クリスマス明け、最後の任務に出掛けたところでやけに暑いと感じたら、伏黒に思いっきりどやされた。どうやら珍しく風邪を引いたらしい。ただ、風邪なのか、呪霊に中てられたのか、イマイチ判断がつきかねるからと、怒鳴った伏黒に連れられてやってきた医務室で様子見と相成った。まあ、伏黒が俺の代わりにまとめて報告書を作成して、提出してくるまでの間、寝て待っていろ。と言うのが正しいのだろう。年末だから年内に提出しとけって言うなら、こんな年の瀬に駆り出さなくてもと思わなくもないけれど、年の瀬だからこそ、刈り取れる危険は摘んでおけと言う理屈も当然理解はできる。猶予があるからとクリスマスに予定を入れられなかっただけで、御の字なのだろう。
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    MondLicht_725

    DONE診断メーカーの「限界オタクのBL本」より
    友華の夏五のBL本は
    【題】見えない楔
    【帯】濡れた紫陽花ごしに顔も見ないで別れを告げた
    【書き出し】そういえば今日の星座占いは最下位だった。
    です

    で書いたもの。
    教祖教師夏五です。
    全部詰め込もうとすると難しいな、という話。
    【夏五】見えない楔 そういえば今日の星座占いは最下位だった。穏やかな声で告げられた内容はろくに覚えちゃいない。BGM代わりに流していたテレビで、番組もそろそろ終わりという頃に必ず始まる短いコーナー。右から左へ流していたのに、最後の部分だけをやけにはっきり覚えている。

    「本日のラッキーカラーは、紫です!」

     へぇ、じゃあ景気付けに茈でもぶっ放そうか、なんて[[rb:冗談 > ひとりごと]]を口にしながらテレビの電源を消して、時間通り、真面目に、お仕事へ出かけたのである。
     今日の目的地は隣県にある小さな寺だった。観光地の片隅にありながらも観光客もほとんど訪れない静かな古刹だ。
     境内へ続く階段の両脇にはびっしりと紫陽花が植えられていて、年に一度梅雨の時季だけ賑わうと聞いたが、今は木々の葉っぱも全て落ちてしまう肌寒い季節である。名物の紫陽花も丸裸になり、むき出しの細長い枝が四方八方に伸びているだけだ。
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