2023.05.21
食卓を囲んでいる。二人しか座る予定のない小さなテーブル。相席者へまっすぐに伸ばせばすこし腕の余る距離。何度も迎えた朝の記憶。
「今日は焼きすぎちゃった。でも、そっちのは僕のよりやわらかいよ」
今朝の当番は来主だった。泊まらせる対価に、調理に慣れるまで、人の口にできるものかテストする為──手料理をねだる言い訳を並べて、振る舞ってもらった朝食が並べられている。
俺の好きな半熟の目玉焼きに、変に焦げたウインナー。おすそ分けに頂いたきゅうりで作った浅漬けと、俺のだけ山盛りにされた白ご飯。来主の定番メニューだった。もう火の扱いには慣れたくせ、どうしてだか毎回ウインナーを焦がす。半熟にする反動だ、とか言ってたっけ。
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