僕は悪い子になりたい「おら起きろ、アッシュ」
コツン、と頭を足先で小突かれて、アッシュはのろのろと目を開いた。
「起きてるよ、ユーリス……ッ」
「そんならさっさと支度しとけよ」
口答えが気に障ったのか、ユーリスは靴の裏でアッシュの頭を軽く踏む。軽く、といっても、アッシュは起こしかけた体をもう一度床に敷かれた薄い毛布に縫い付けられてしまった。やめてよ、と言いたかった口は閉じ、今度こそ体を起こす。まだ回復しきっていない腕が痺れたが、さっさと寝床の始末をする。
「今日は俺らが朝飯の当番だ、行くぜ」
「……」
ユーリスはアッシュの首に付けられた首輪―――かつて灰狼学級の制服に付属していたものだ―――に結んだ縄を掴むと、まるで罪人を引っ立てていく看守か処刑人のように歩き出す。実際、その通りなのだ。一度はローベ家に仕える身となり、ベレト率いる同盟軍に敵対したアッシュは、先の戦場で何人かに弓を射かけ負傷させている。無論、自身の信念に従って行動した結果であり、後悔はない。……はず、だった。
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