仕事嫌いと脳内麻薬「俺さー、基本的に仕事嫌いなんだわ」
ソファを背もたれにして、ローテーブルの前に座る俺の足の間に座り、俺にもたれかかったままの体勢でタバコを吸う先輩はそんな事を口にする。ローテーブルの上では、先輩が気に入っている球体型の加湿器の中で液体がぐるぐると回っていた。
「知ってますよ、今更何スか」
そう返せば先輩は煙を吐きながらそっか、と呟き言葉を続ける。
「でもさー、何かな、クソ忙しくなるとスイッチ入るらしくてテンション上がってくるんだよな。その後すげえ疲れるんだけど」
ソレ、脳内麻薬ってヤツじゃないですか。凍死する前とか気持ち良くなるやつ。と心の中で突っ込みながら、更に言葉を続けそうな先輩の言葉を待つ。普段無口な先輩が饒舌になるのはあまり無いことだから、先輩の言葉を遮らないように。
「ンでさ、そういう時って大抵アンパンマンの曲が流れるのな。何のためにうーまれてーってヤツ」
球体型の加湿器から目を離さずに、先輩は脈絡もない話を喋り、煙を吸い込む。
「あぁ、先輩たまに喫煙所でアンパンマン歌ってますよね」
忙しい日の休憩時間に喫煙所で虚ろな目をしてボソボソと子供向けアニメの主題歌を口ずさむ先輩の姿を思い出しながらそう返せば、先輩は「マジでか」と心底嫌そうに言う。
「無自覚だったんですか」
そんな先輩があまりに可愛くてその背中を抱き込むように肩口に顔を寄せれば癖のついた先輩の髪の毛が頬を擽る。癒しグッズ収集が趣味兼ストレス発散である先輩が着るのは肌触りの良い絹の入った柔らかなシャツ。俺の着ている安物のスウェットとは雲泥の差なその布の柔らかな肌触りを顎に感じていれば、「暑苦しい」と一蹴される。
「しかし、口に出してたなら、考えなきゃな」
「良いじゃないですか、可愛くて」
歌を口に出さないようにしないと、と考え込みはじめる先輩にそう言えば、呆れきった声色であのなぁ、と。
「30過ぎたおっさんを可愛いとか言うの、お前くらいだぞ」
先輩は自分の人気をわかってない。そこがまた可愛いし、言うつもりもないけれど。
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長身後輩とちっちゃい先輩って組み合わせ可愛いなぁ、と考えてたらこんな事に。久々にほのぼの。多分社畜と言うほど社畜じゃない。
先輩:癒しグッズ収集が趣味。受
後輩:先輩を愛でるのが趣味。攻
名前はまだない。
※これが後の青嗣くんと宇宙さんである。
(2014-10-11)