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    狭山くん

    @sunny_sayama

    腐海出身一次創作国雑食県現代日常郡死ネタ村カタルシス地区在住で年下攻の星に生まれたタイプの人間。だいたい何でも美味しく食べる文字書きです。

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    狭山くん

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    2022-07-02/夏の空閑汐♂祭2日目!汐見♂と吉嗣先生の組み合わせ、あまりにも気安い関係過ぎて超楽しい。

    ##空閑汐BL
    ##静かな海
    ##デイリー
    #文披31題
    wenPhi31Questions
    #BL

    文披31題・夏の空閑汐♂祭:Day02 金魚鉢を模した透明なアクリルの中、赤く透き通った尾鰭を揺らめかせているのは金魚だった。誰も使っていないデスクの上に置かれたアクリルの下に置かれた機械はモバイル端末と繋がれ、草臥れたティーシャツを纏う青年は唸りながらもキーボードを叩く。カチャカチャとプラスチックが擦れあう音を響かせる自身の教え子でもあった青年――汐見の姿を横目で見つつ、吉嗣は訝しげな表情を浮かべながら紙巻きタバコを咥えていた。
    「汐見お前、休みだってのにこんな所で何やってんだよ」
    「センセにも同じ言葉が返ってくるってわかってます?」
     春先に比べれば少し伸びた髪を後ろで括り端末の画面を睨んでいた汐見は、吉嗣が指先で弄んでいたオイルライターから涼しげな金属音が響いたのにジロリと視線を向けたかと思えばすぐに端末へと向き直る。
    「職員寮は禁煙だからな、格納庫では流石に吸えんがこっちは俺の城な訳。クーラー完備、換気も完璧。他の教員もここには来ないからやりたい放題ってな」
     紫煙を燻らせ、口元に弧を描く吉嗣の言葉に「センセが入り浸ってるから他の教員が来ないんじゃないすか?」と汐見はキーボードを叩き続ける。アクリルの中を泳ぐ金魚の姿は消えていた。
    「人聞きが悪いな。俺が他の教師に距離置かれるようになったの、お前ら入って来てからだぞ?」
    「俺とヒロミに責任転嫁するつもりすか」
     再びアクリルに現れた金魚は先ほどよりも細かい動作でふよふよと舞うように泳ぎ、その姿を確かめた汐見は満足げに頷く。
    「本当の事だからな。お前ら入ってきて、格納庫入り浸るようになってからだぞ」
     抜きん出て優秀であった二人の学生に目をかけたのは吉嗣だったが、未だに出る杭は打たれる性質がざらざらとした感触を残すこの場所ではどうしても彼らは浮いていて。
     他のコースで同じような理由から浮いている同期達と交友を重ねていたようだが、吉嗣以外の教員は事なかれ主義とでも言うのか――有体に言えばあまりにも優秀な生徒達をどのように指導すれば良いのだろうかと持て余していた所がある。
     そういった小さな積み重ねが、航空教官室という吉嗣の城を作り上げたとも言えるのだが。
    「そりゃすんません、でもセンセだってこうやって教官室独り占め出来て役得なんじゃないすか?」
     再び金魚鉢の中から金魚を消した汐見は、口端に気の強さが滲み出るような笑みを浮かべながら端末を繋ぐ配線を外していく。アクリルの塊を乗せた機械のスイッチを押せば、再びその鉢の中では優雅に金魚が揺らいでいた。
    「まぁそうなんだがな――にしても、汐見お前ホントに何作ってんだ? 空閑も居ねぇし」
     肺に溜め込んだ煙を吐き出し短くなったタバコを携帯灰皿へと押しつけながら、吉嗣は鉢の中で泳ぐ金魚へと視線を向ける。一滴の水も入れられないだろう削り出されたアクリルの中で揺らぐ金魚は、本物のように美しく優雅な動きで吉嗣の目を楽しませてくれた。
    「あぁ、今週暇だったんでヒロミとかヴィン達と勝負してんすよ。次の土曜までに誰がホロ使って一番本物っぽい金魚が作れるかって勝負すね――こればっかりはヒロミの前で出来ないんで、俺が教官室行ってヒロミは部屋でプログラム組むって話になりまして」
     やっといい感じに動き始めたと思いません? 達成感に満ちた笑みを浮かべる汐見に、吉嗣は思わず小さく息を吐く。アクリルの中で泳ぐ金魚は、とてもじゃないが学生の暇つぶしで作られた動きには見えなかった。
    「高校卒業して数ヶ月の奴が暇つぶしに作るレベルじゃないだろ、コレ」
    「ヴィンとかはもっと凄いすよ、俺は固体じゃないと上手く投影出来そうになかったんでアクリル削ったんすけど、ヴィンなんか本当の金魚鉢に水入れてホロ映しますからね」
     液体にホロ映像を投影させるなんて、その道のプロでも難しい技術だろう。吉嗣は唖然としながら、言葉を溢していた。
    「ホント、お前らって規格外だよな……」
     思わず溢れたその言葉に、汐見は肩を竦めて笑うのだ。
    「まぁ、褒め言葉として貰っておきますよ」
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