試し行動 イライ・クラークは試し行動をする人間だ。
いや、する人間になってしまった。
カシャンと音を立てて落ちたスプーンを彼は見下ろす。かがんで、拾おうと手を伸ばしもせず、食事をする手も止めた彼がなにを望んでいるかなど簡単に理解できた。近寄り、スプーンを拾って、新しいものをテーブルのうえに置く。
すると、再びカシャンと音がした。
スプーンが床に落ちている。彼はまたつんと澄ました顔でそれを眺める。
「イライ」
「なんだい?」
「行儀が悪いぞ」
むっと唇を尖らせ、すねた真似をする彼は片肘をテーブルについて、スプーンを指さした。
「拾って」
「わざと落とすなら拾わない」
「わざと落としたって証拠はあるのかい?」
子どものような屁理屈にため息が出る。なんて餓鬼だ。しかして、彼はもうそんなわがままを許されるほど幼子でもない。
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