アルカヴェ小説候補話2今日はたまたま隣になった、ティナリとセノとカーヴェの3人で酒を飲んでいた。話が、盛り上がった時には既にカーヴェは酔いつぶれていた。そこに、ティナリから連絡を受けたのか酔いつぶれたカーヴェのもとへアルハイゼンが迎えに来る。
「遅くなった」
ティナリがカーヴェを起こしてるところに、アルハイゼンが声をかける。ティナリは、アルハイゼンが来たのを確認してからカーヴェの体を揺らしながら起こす。
「あっほらカーヴェ、アルハイゼンが迎えに来たよ起きてごめん……、止めたんだけどいつの間にか隣のテーブルから何杯か奢ってもらってたからね」
それを聞いたアルハイゼンは、ため息をつきながらカーヴェに言う。
「はぁ……手間の掛かる……。帰るぞ」
カーヴェは、ふわふわした頭でアルハイゼンに気づく。潤んだ瞳、紅潮した、顔そして上目遣いで聞く。
「うぅ……あるはいぜん……?もう一杯……、もう一杯だけ、だめか?」
「駄目だ」
アルハイゼンは、間髪入れずにカーヴェの言葉を否定する。
「ケチ……。ケチハイゼン……」
「…………」
アルハイゼンはブツブツと言うカーヴェを無視し、無言でカーヴェを肩に担いで店を出て行く。
*****
外に出ると、涼しげな風が火照った体を冷ましていく。そして酔いが覚めてきたのか、カーヴェはアルハイゼンに文句を言う。
「おい、こんな運び方するな!僕は、先輩だぞ!もっと敬え!!」
カーヴェは、肩の上で顔だけを向けてアルハイゼンに言い放つ。しかし、そんなカーヴェの文句も効かないのかアルハイゼンは淡々とした言葉で返す。
「あいにく俺は、酔って醜態を晒すような者に、尊敬の念を抱かない。敬って貰いたいのなら、敬いたくなるような行動を心掛けることだな」
「……っ!……それなら、なんで迎えに来るだ?もしかして、金目当てか?」
「持っていないだろう」
「じゃあ、僕の才能?」
「俺には、必要ない」
「あーそうかい」
カーヴェは、だんだん切れそうになるのを我慢しなから言う。さらなる質問をアルハイゼンにしようとしたその時、一番ありえないだろことを質問投げかける。
「分かったぞ、アルハイゼン!君、僕のこと好きだろ!」
アルハイゼンは、ちらりとカーヴェの方を向いたが再び前を向いて答える。
「そうだ」
「……。は…………?」
アルハイゼンの意外な反応で、カーヴェは少し戸惑う。そんなカーヴェに気づいてないのか、アルハイゼンは続ける。
「分かったなら、少し静かにしてくれ。耳元で騒がらたら、煩くてかなわない」
高鳴る心臓の音を聞かれたくないのか、それとも赤くなった顔を見られたくないのかカーヴェは、思わずアルハイゼンの服をギュっと掴む。そしてカーヴェは、消え入りそうな声で呟く。
「〜〜〜〜……!君ってやつは……」
(そいうところが………、僕は………。僕は……)
「嫌いだ……」
(好き……)
「大嫌いだ!!!」
(大好き……)
カーヴェは、自分の気持ちを押し殺すように叫んだ。そして、その叫び声と同時に星空が広がる夜空を見上げる。そこには、無数の小さな光が輝いていた。まるで、2人の会話を聞いているかのように……。
「それで?今日は何があったんだ?」
朝起きてからずっと不機嫌だったカーヴェを見て、気になったアルハイゼンが話しかけた。すると、いつもより低いトーンでカーヴェが答える。
「昨日、ティナリとセノと飲みに行ったんだけどさ……」
「ああ」
「あいつら、僕が酔っている隙を狙ってキスしてきたんだよ!!信じられるか!?しかも、舌まで入れてくるなんて……!」
「……」
「それに、あの後セノがティナリの胸揉んでたし……。全く、本当に最悪だよ!」
「……そうか」
「あっ、あとティナリが言ってたんだけど、最近カーヴェとアルハイゼンって仲良いよねって言われたよ。本当、嫌になるよ」
「……そうか」
「ちょっと聞いてんのか?お前からも何か言ってくれよ!」
「……いや、別にいいんじゃないか?」
「えっ……?い、いや良くないだろ!男同士だぞ?おかしいだろ!」
「……?いや、何もおかしくはないと思うが」
「……は?いやだって、普通じゃないだろ!男が男の事が好きとか……、そんなの変だし、間違ってる!」
カーヴェは、今まで見たことのないぐらい動揺していた。
「……。カーヴェ、一つ聞きたいことがある」
「……なんだよ」
アルハイゼンは、真剣な表情でカーヴェを見る。
「もしかしてだが、カーヴェは恋愛対象として俺の事を見たことはないか?」
「はぁ!?」
「どうなんだ」
「……ないけど……」
それは、嘘だった。カーヴェはずっとアルハイゼンの事を恋愛対象として、見てきた。しかしそんな事を知られる訳にはいかず、咄嗟にそんな言葉が出てしまっていた。
「そうか……」
アルハイゼンは、少し残念そうな顔でカーヴェに言う。
「それなら、これから意識してみてくれないか?俺は、いつでも待っている」
「……はっ?」
「では、先に行っている」
それだけ言い残し、アルハイゼンは部屋を出て行く。一人残されたカーヴェは、ベッドに倒れ込む。そして、枕に向かって叫ぶ。
「……なんなんだよ、もう!!」
*
***
あれから、1週間が経った。相変わらずカーヴェは、悩んでいた。
(なんで、こんなにも悩んでいるんだ?あんな奴の事が好きだなんてありえないだろ!そもそも、僕には心に決めた人が……!)
カーヴェは、頭を抱えながら机の上に置いてある写真立てを手に取る。その中には、幸せそうな笑顔で写るアルハイゼンの姿がある。
(……アルハイゼン……)
その時ふと、アルハイゼンの言葉を思い出す。
『俺の事は、ただの友達だと思ってくれて構わない』
(そうか……。そうすれば、悩む必要もなくなるし、この気持ちも忘れることができる……)
しかしカーヴェには、そんな事は出来なかった。長年恋焦がれていた相手からの告白に、確かに胸が高鳴ったのだ。アルハイゼンも自分と同じ気持ちだったことが嬉しかったのだ。
そして、アルハイゼンの優しい眼差しで見つめられる度に、心が締め付けられるような感覚に陥る。カーヴェは、そんな感情を誤魔化すために酒を飲んでいた。
そして、またいつものようにアルハイゼンに肩を担がれて家路に着く。そして、アルハイゼンはカーヴェをソファーに寝かせて、タオルケットをかける。
「アルハイゼン……」
「何だ?」
「僕は、君に相応しくない。君は、僕なんかよりもっと素敵な人と一緒になった方がいい」
「……」
「君に好きな人が居るなら尚更だ」
「……。俺は、カーヴェが良い」
「駄目だよ……。僕は、君の隣に立つ資格がない……」
「そんなことない。俺は、カーヴェじゃなきゃ嫌だ」
「……どうして、そこまで言えるんだ?」
「……分からない」
「……っ!はは、君らしいね」
「でも、これだけは分かる」
「……」
「俺は、カーヴェ