「先輩」 「先輩」、そう呼ばれるのは何も初めてじゃない。自分で言うのもなんだけど年上年下関係なく程々に好かれるのは得意だし、学内で嬉しそうにそう自分のことを呼び慕ってくる一年生だっている。
だけど、どうしてか、同じユニットのあの後輩が呼ぶ「百々人先輩」の響きに。今まで感じたことのないくすぐったさとむず痒さを感じずにはいられないのだった。
よりにもよってダンスレッスン中にそんなことを考えていたものだから、当然天峰に集中力の甘さを指摘されることになってしまった。
「百々人先輩、どうかしました?」
「……ううん?何でもないよー」
ちょっとぼんやりしてただけ、というと天峰は納得したように頷き、あとはもう気にした様子もない。それはそれでどこか釈然としないが、今考えていることを追求されても困る。
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