ベリーベリーストロング「……なんで僕がこんな目に…」
駅前商店街のアーケードの入り口あたりに立った僕は最早今日何度目かもわからない溜息をついて、左手の腕時計をちらりと見た。時刻は17時を過ぎたところだった。普通ならば、いわゆる定時というやつだ。今の僕には当てはまらないけれど。
僕の右手のバインダーにはアンケート用紙の束が挟まれている。街頭アンケート・ノルマ達成するまで帰れません、だなんて、TV番組の企画じゃないんだから。
修士卒の新卒で就職したこの会社がどうやらまあまあなブラック企業らしい、ということには薄々気付いていた。新任研修という名のもとに、先週はテレアポ100件、今日はこの街頭アンケートだ。いくら顧客ニーズをより深く知っておくべきだとは言え、営業でもない、プログラマーとして入社した新入社員にやらせることか? いや、自社製品については、それなりに良いものを作っているとは、思っているのだけれど。
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