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    misano414

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    #チェズモクワンドロワンライ

    第18回「交換」。
    ニンドリインタビューのネタバレを少量含みます。

    「武器を交換したい?」
     モクマは、相棒の突拍子もない申し出に、素直に首を傾げた。
    「この先何があるかわかりませんから」
     チェズレイはしたり顔で続ける。万が一の事態に備え、鎖鎌の使い方を知っておきたい。だが、とモクマは戸惑いを口にする。あれを振り回すには、チェズレイはいささか膂力不足ではないだろうか。
     逗留しているホテルは流石のハイクラスで、かつ続き部屋タイプを借りているため、武器を振り回すだけの広さがある。とりあえず、モクマは鎖鎌をチェズレイに渡した。すると、チェズレイは愛用の仕込み杖を渡してきた。
    「……大丈夫なの、手放して」
     真っ先に、それが心配だった。一人の時はもちろん、モクマと二人の時間でも、決して手放さない仕込み杖。転ばないように歩くのに、それが必須なのではないのかと。
     だがチェズレイは眉を顰めるだけ。
    「転ばぬ先の杖、という言葉をご存知ない?」
     再びの突拍子もない言葉に、モクマは素直にお手上げだ。首を振ると、チェズレイが笑う。
    「私、左目は見えていないわけではないのですよ」
     実際、普段の生活において、杖の先で行き先を探る様な仕草はない。杖なしで歩いているところはあまり見かけないが、杖に頼った歩き方でもない。まだ何か言いたげなモクマを無視し、チェズレイは鎖鎌を持ち上げて、振り回してみた。なるほど、ただ回すだけなら問題はないが、殺傷能力を持たせるスピードとなれば、手に余る武器だ。
     だが、それは大した問題ではないのだ。
    「あのですね、モクマさん」
     チェズレイは、モクマに鎖鎌を返す。
    「私はあなたに、これの使い方を知っておいてほしいのですよ」
     ミカグラの刀と剣はまた違う。あちらは斬るもの、こちらは突くもの。とはいえ、無用の心配だったかもしれないと、チェズレイは思い直す。いざとなれば、モクマは何でも器用に使いこなす。それこそ、ボウリング球でも、バールのようなものでも、その辺の爪楊枝でも。
     その実、自分のことを知っておいてほしいだけなのかもしれないなと、チェズレイは自分自身に呆れるのだった。
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    ▶︎古井◀︎

    DONE #チェズモクワンドロワンライ
    お題「三つ編み/好奇心」
    三つ編みチェとおめかしモさんの仲良しチェズモク遊園地デートのはなし
    「チェズレイさんや」
    「なんでしょうかモクマさん」
     がたん、がたん。二人が並んで座っている客車が荒っぽくレールの上を稼働してゆく音が天空に響く。いつもより幾分も近付いた空は、雲一つなくいっそ憎らしいほど綺麗に晴れ渡っていた。
    「確かにデートしよって言われたけどさあ」
    「ええ。快諾してくださりありがとうございます」
     がたん。二人の呑気な会話を余所に、車体がひときわ大きく唸って上昇を止めた。ついに頂上にたどり着いてしまったのだ。モクマは、視点上は途切れてしまったレールのこれから向かう先を思って、ごくりと無意識に生唾を飲み込んだ。そして数秒の停止ののち、ゆっくりと、車体が傾き始める。
    「これは――ちょっと、聞いてなかったッ、なああああああっ!?」
     次の瞬間に訪れたのは、ジェットコースター特有のほぼ垂直落下による浮遊感と、それに伴う胃の腑が返りそうな衝撃だった。真っすぐ伸びているレールが見えていてなお、このまま地面に激突するのでは、と考えてしまうほどの勢いで車体は真っ逆さまに落ちていく。情けなく開いたままの口には、ごうごうと音を立てる暴力的な風が無遠慮に流れ込んできた。
     重力に引かれて 3823

    ▶︎古井◀︎

    DONE横書き一気読み用

    #チェズモクワンドロワンライ
    お題「潜入」
    ※少しだけ荒事の描写があります
    悪党どものアジトに乗り込んで大暴れするチェズモクのはなし
     機械油の混じった潮の匂いが、風に乗って流れてくる。夜凪の闇を割いて光るタンカーが地響きめいて「ぼおん」と鈍い汽笛を鳴らした。
     身に馴染んだスーツを纏った二人の男が、暗がりに溶け込むようにして湾岸に建ち並ぶ倉庫街を無遠慮に歩いている。無数に積み上げられている錆の浮いたコンテナや、それらを運搬するための重機が雑然と置かれているせいで、一種の迷路を思わせるつくりになっていた。
    「何だか、迷っちまいそうだねえ」
     まるでピクニックや探検でもしているかのような、のんびりとした口調で呟く。夜の闇にまぎれながら迷いなく進んでいるのは、事前の調査で調べておいた『正解のルート』だった。照明灯自体は存在しているものの、そのほとんどが点灯していないせいで周囲はひどく暗い。
    「それも一つの目的なのではないですか? 何しろ、表立って喧伝できるような場所ではないのですから」
     倉庫街でも奥まった、知らなければ辿り着くことすら困難であろう場所に位置している今夜の目的地は、戦場で巨万の富を生み出す無数の銃火器が積まれている隠し倉庫だった
     持ち主は、海外での建材の輸出入を生業としている某企業。もとは健全な会社組織 6166

    ▶︎古井◀︎

    DONE #チェズモクワンドロワンライ
    お題「夢/ピアノ」
    ピアノを弾いたり聞いたりするチェズモクのはなし
     ピアノの美しい調べがモクマの鼓膜を揺らし、微睡のさなかに心地よく沈んでいた意識を揺り起こした。そっと目蓋をひらくと、目の奥に残る微かな怠さが、まだもうすこし寝ていたいと訴えている。
     なにか、ずいぶんと長い夢を見ていたような。輪郭を捉えていたはずの夢の記憶は、意識の冴えに比例するかのように、ぼんやりと霞む脳に絡まっていた残滓ごと霧散していく。もはや、それが悲しかったものか嬉しかったものなのかすら思い出せないが、そっと指先で触れた目尻の膚が、涙でも流れていたみたいに張り詰めていた。
     怠惰な欲求に抗ってゆっくりとシーツの海から身体を起こしたモクマは、知らぬ間にもぬけの殻と化していた、すぐ隣に一人分空いていたスペースをぼうっと眺める。今響いているこの音は、どうやら先に目覚めた恋人が奏でているらしい。
     音に誘われるまま、眠気にこわばったままの上半身をぐっと伸ばし、モクマはサイドテーブルに置かれていたカーディガンに袖を通す。モクマが何の気なしに足を下ろした位置に、まるで測ったみたいにきっちりと揃えられていたスリッパに、思わず笑みを漏らしながら立ち上がった。
     壁際のチェストの上でもうもうと 3916

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