再会、再開霧雨が晴れる時のように、緩やかに意識が浮上してゆく
辺りは薄暗く、ようやく現実に戻ったのだと実感が湧いた

｢戻った...のか｣

あの嫌味なほど海賊たらしい洋装も無くなり、ベポに泣き落とされて着の身着のままやってきたスタイルに戻っていた

｢キャプテン！大丈夫？｣
｢あぁ...お前も元に戻ったんだな｣

辺り一面に人間が倒れている。しかし死んでいる訳ではなさそうだ

｢キャプテン、周りの人達どうする？｣
｢...あの女の能力は解除されたから直に目が覚める。放っておいていい｣

それよりも今は、あいつが気がかりだ

｢ベポ、俺は様子見てくるからここにいろ｣
｢アイアイキャプテン！｣


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まずは高い所へ移動だ。
手っ取り早く、ROOMを展開し入れ替わる。大方、あいつらの事だ。海賊らしくもなく目立つ場所にいるんだろう

｢.....はぁ｣

その一味は、ステージからもドームからも目に留まりやすい、小高い丘のある島で仲良く寝こけていた

｢危機感ってもんをいい加減に覚えやがれ｣

シャンブルズの掛け声とともに景色が入れ替わる。麦わらの一味はまだもれなく夢の中のようだ

｢...麦わら屋｣


世界を巻き込んだ歌姫の暴走と、麦わら屋

あの女の過去に興味はねぇ
あの女が麦わら屋の幼なじみだったとしても、麦わら屋にとっても特別な相手だったとしても、何をやらかしたとしても。全てはもう終わったことだ

｢...また、背負うのか｣

手のひらから鼓動が伝わる
微かな音が耳に引っかかった

｢...ぅ...タ｣

頼む、連れて行かないでくれ
なぁ、あんたは嫉妬したんだろ

"新時代"を切り開き続けるコイツに
置いてけぼりにされた気がして、負けたくなかったんだろ？

｢ふふっ、嫉妬なんかしてないよ！ルフィは私にとって、とっても大切なともだちで、ライバルだから！｣

｢...！｣
｢あなた、変な能力使ってた人！...へ〜そんなに大事そうにルフィのこと抱えちゃって、ルフィってば愛されてるのね〜｣

子気味よく動く、白くて小さな少女は無邪気に麦わら屋の鼻を小突きながら振り返った。

｢ねぇ。トラ男…さん？だっけ｣
｢………あぁ｣

麦わら屋も麦わら屋の幼なじみだというこの女も、苦手なところは同じらしい。


｢...これでもうお別れだけど、最後に言っておくことがあるわ。その1！ルフィを大切にすること！その2も同じよ｣

｢全力でルフィは向かってくる。だから、あんたも全身でルフィを愛してね｣


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むにゃむにゃと寝言を零す麦わら屋を芝に下ろす。あどけない寝顔はまだ若い印象を与えるが、その内側にはあらゆるものを背負っているのを俺は知っている。

｢全身で、愛する……ね｣

掌に意識を集中させる

｢ROOM、シャンブルズ｣

｢わっ！？キャプテン...？｣
｢...行くぞ、ベポ｣
｢えっ？麦わらたち起きるまで待ってなくていいの？｣
｢あぁ...俺たちには、俺たちのやることがある｣

海賊を辞めろと言った少女が残した約束
それは、幼なじみを想う言葉で満ち溢れていた。

俺は一足先にワノ国へ行く。麦わら屋と、麦わら屋の大切にしているものを守るため。
素直に｢愛してる｣なんて言えねぇ俺ができる精一杯の表現だ。

早く追いついてこい、麦わら屋