夢だっていいじゃない ドアの鍵は開いていた。
ノブをひけばかちゃりと金属のすれあう音がして、開いたさきに男がひとり立っていた。
まだ若い。背丈も幅もしっかりとして、けれどどこかにあどけなさがある。
目鼻のあたりが昔馴染みの女によく似ていた。記憶を辿り、阿久津さんと女の名前を呼べば、はいと男が返事をした。
女の下の名は覚えていなかった。阿久津という名がうそでなかったことがすこし意外だった。
「なにかご用ですか」
男の敬語はたどたどしい。ずいぶんとこどもなのだとそれで気づいた。
「死なはったって聞いて」
ああ、と男はうなずいて、それからドアから手を離した。
ドアノブを託されたので私はそのまま部屋に入った。
1Kの室内はもので溢れていた。始末の悪い女だとは知っていたから別段驚きはしなかった。
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