不覚日が沈んでいく。マイカの紅葉が夕日に照らされ、紅の葉が橙に上塗りされていく。
今日も、今日という日が終わる。
モクマようやく眠気の覚めた頭を起こし、大樹の上で胡座をかき頭を掻く。長い時間圧迫していた後頭部がとにかく痛んだ。
「……」
城の明かりが微かに見える。空が暗くなり始めてきている。
もう帰らなくてはいけない。
今日はタンバはこの大樹に来なかった。イズミも舞の練習に来なかった。モクマは何もせず、今日一日ただひたすらに大樹の上で寝た。久方ぶりによく眠れたような気がして、少し気分が良かった。
「モクマ」
「!」
そんなモクマだったが、己を呼ぶその声に、指の先まで緊張が走る。
「フウ、ガ……っ」
モクマの頭の中で警鐘が鳴り響く。
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