手記りーーん、 りーーんと、鈴の音が聞こえる。
いや、耳鳴りなのかもしれない。
両親と喧嘩し、家を飛び出したのだが、随分と森の奥深くまで走って来てしまっていたようだ。
母や祖母が口酸っぱく何度も何度も行くなと言っていた森の奥に来てしまったという焦燥感と共に、ほんの少しだけ、森の奥になにがあるのか知りたかったという好奇心があった。
もうここまで、深く入ってきてしまっているのなら、引き返すことも無理だろうと諦め、とぼとぼとさまよい歩くことにした。
いくらか歩いてみると先程よりもずっと霧が濃くなって、息がしにくくなってきているのを、感じた。
ハッ、ハッと、浅くなる息。上手く呼吸が出来ずに苦しくなっていると、ふと、赤い光が木々の先に見えた。
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