大切な身体の一部。窓からそよそよと柔らかな風が入ってくる。風に靡く白い髪。ふんわりとした頬の横の白い髪を一束手に取ると、彼女は口を尖らせながら己の髪を眺めている。何やら思うところがあるらしく隣にいる男の方に、ねえ、と声をかけた。
「くせっ毛、なんとかならないかな?」
「街の中ではフードを被るんだ、気にならんだろう」
「そうだけどさ……この時期になると汗や湿気で首に貼りつくし膨らんで髪の毛がもふもふになるんだよー……」
「それの何が悪いのか私にはわからんな……」
男は彼女の束ねられた髪を掬い上げ、唇を寄せる。シーツの下から覗いている陶器のような肌はそれだけで熱を帯びて赤く染まっていく。それを振り払うかのように首を振れば男の頬にビタンっと束ねていた髪の束が当たり、彼女は手を叩いて笑った。
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