あなたの苦しみを搾り取る ノボリさんは時々ひどく申し訳なさそうな顔になる。それはいつも、私の上で果てた後だ。
「――」
「ノボリさん?」
「もうしわけ、ありません」
「なにがですか」
なにも申し訳ないことなんてないのに。私はノボリさんの固い体も、ごつごつした手も太い腰も全部好きなのに。それを私だけにさらしてくれることが、どれだけ嬉しいのか、あなたはまだわからないのか。
「あなた様はお若い。若い身をこのような老人に差し出すことなどないのに」
「はりたおしますよ」
普通にイラッときた。私の好きな人に失礼なことを言うな。
眉を下げたままのノボリさんの胸を押して起き上がる。そこかしこどろどろなのは構わない。明日洗えば済むことだ。
起き上がって、ノボリさんの腕を引く。彼は素直に私に押し倒される。だからまたがって、まだ堅さの残るソレをもう一度自分の中に招き入れる。
「ショウ様」
「ねえノボリさん。月が綺麗ですよ」
情けない顔で仰向けになったノボリさんが、わずかに開いた窓から外を見る。もちろん月は見えない。だって今晩は新月なのだ。
「わたくしには見えません」
「ええ、私にだって見えません。であれば、私たちが見なくちゃいけないのは、お互いじゃないですか。他のことやものなんて、今は見ないでくださいよ」
腰を振る。苦悶のようなナニカを堪えるような喘ぎが、狭い部屋に満ちる。それが私の耳にも届いて体がうずく。
「ちょ、しょ、さま。いけません」
「いけなくないです。だって助けなんてないんですから。ね、ノボリさん」
押しつぶされたような声と一緒に吐き出された体液が私に満ちた。それでお腹が温かくなって、さっきまでの苛立ちが収まった。
「すきですよ、ノボリさん。だからせめて、私といるときにそんな顔しないでください」
「――そう、ですね」
ノボリさんは観念したように息を吐いた。
「このような格好で、かっこつけるだなんて、無意味ですね」
二人とも、どちらのものかもわからない体液でベトベトで、服は脱ぎ散らかされて、素っ裸で息も上がっている。恥もなにもあったもんじゃない。かっこ悪すぎる。
私たちは目を合わせて笑った。