願わくばこの呪いを標として「それで?」
放浪者の言動はいつだって気まぐれだ。旅人の想像を飛び越えて、己の求める結果に向かっていく。今回は、名前を呼ばせてからじっと何かを欲しがるように見つめている。彼が必要としているものを旅人は測りかねていた。
「えっと、呼んだけど」
「ああ、人間は名前を与えるとき何か意図を織り込むことがあると聞いてね。君はいったいどんな意図でもって僕を縛ろうとしたのか気になったわけさ」
そういうことか、と旅人は合点する。旅人とて、放浪者に「本来最初に与えられるはずの贈り物」を贈る立場になったからには、その名に溢れんばかりの願いを込めていた。振り返ってみれば必死すぎて滑稽かもしれないその願いは、一方で旅人にとっては今でも改心の出来だ。ともすれば言葉にするのが気恥ずかしくなってしまうほど。
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