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    ノダヌキ

    @Prnia5

    @Prnia5 で生息中。
    忍たまに再燃。六年生推し。
    文字書きしてます。メインは留文。
    基本的にCPの地雷がない雑食。

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    ノダヌキ

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    2023/10/17 留文ワンドロ「代筆」
    珍しく室町。

    2023/10/17 「代筆」先に言っておく。
    いくら犬猿だなんだと言われていようが、いちおう恋人関係という括りに入るのだ。
    欲求不満になってもおかしくないだろう。

    事の発端は一ヶ月ほど前のことだった。
    喧嘩やら決闘やら……とにかく普段通り些細な事で争っていた食満と潮江の二人は体術のテストに向けて鍛錬を行なっていた。
    お互いに好敵手と認めるくらいに実力のある相手に拳を交えて拮抗する勝負に頭に血が上るのを感じながらも目の前の相手を倒して地に伏せさせる為にどう動くかと冷静に考えている自分もいた。
    的確に己の右頬を打ち抜いた拳越しに勝負好きの食満の口角が段々と上がり、目を爛々と輝かせているのが見えた。
    それを見て潮江も楽しさで理性が切れかかるのを感じた。

    「いってぇ〜…思いっきり脇腹蹴り飛ばしやがって」
    「うるせえ。お前も顎狙ってぶん殴ったろうが…いった、あー血の味がする」
    長屋の井戸で水を汲み上げ、頭巾も髪も解いて頭から冷水を被る。体を濡らす水の冷たさが興奮して上がった体の熱を冷ましていく。
    「口の中、切ったんじゃないか? 見せてみろ」
    「ん? あー……」
    「ん〜……あ、左頬の裏ちょっと切れてる」
    潮江の口内を覗いた食満が、自身の左頬を指差しながら潮江に傷のある位置を説明する。
    しばらく刺激の強い物は食べられなさそうだなんて考えながら潮江が口を閉じようとすると、食満の左手が潮江の顎を掴んできた。
    「?……っむ、ぅん」
    睨み付けるのと同時に食満が口を開いて噛み付く様に唇を塞いでくる。
    食満の唇が触れ合う事でピリッとした痛みが潮江の唇に走った。
    どうやら唇も切れてしまっていたらしい。また新たに見つけた傷に後で伊作に小言を言われるな…と考えながら潮江は口内に入ってきた食満の舌を甘噛みした。
    食満の手が潮江の腰に回り密着するように体を引き寄せた。潮江は抵抗せずに一歩踏み出して食満に近付いた。
    水で冷ましたはずの興奮が再びジリジリと熱を上げる。
    日の当たる時間にするには深い口付けを交わし、息を整えようと少しだけ二人の顔が離れた。
    「……この後は?」
    「……特に用事はない」
    「なら──」
    鼻先が触れそうな距離で囁き声で話しているとだれかが廊下を歩いてくる気配を感じた。
    すぐに距離をとった二人は気配のする方向に視線を向ける。
    食満先輩──と食満の名前を呼ぶ富松の声が聞こえた。
    「おう、どうした作兵衛!」
    食満が大きな声で返事をすると走ってきた富松が肩で息をしながら用具倉庫の方向を指差した。
    「すみません! テスト前の鍛錬中に! 用具委員会で使う道具が壊れちまって…一年と浜先輩と修理してたんですが、どうしても直せないものがあって」
    息を切らしている富松の背中を撫で摩りながら食満は「わかった」と言うとチラリと此方を見た。申し訳無さそうな笑みを浮かべているのを見た潮江は気にするなと言う代わりに、手を払うように動かして食満にさっさと行く様に伝えた。
    食満の背中が廊下の角を曲がって消えるまで見送った潮江は少しだけ火のついた欲を消すために、もう一度井戸から水を汲み上げると頭から水を被った。
    「はぁ…タイミング悪……」
    真っ青な空を見上げてポツリと呟いた潮江の言葉は風に乗って消えた。

    それ以降も喧嘩の後の興奮で互いに熱を分け合おうとしたり、二人きりになり良い雰囲気になる時もあったが、何故かタイミング悪く誰かしら、何かしらの邪魔が入ることが多かった。
    犬猿の二人が仲良くすると雨が降るなんて言われるが、まさか犬猿の二人が仲良くしようとすると邪魔が入る──なんてこと起きてないよなと考える位には一ヶ月の間に邪魔が入り過ぎた。もう食満も潮江も色んな意味で限界だった。
    学園内では駄目だと判断して二人は街に向かうことにした。
    鍛錬に行くと装い、支度のある潮江が先に出て宿に向かい、その後に食満が学園を出て合流することにしたのだ。
    私服に着替えた潮江は学園外に出るため、事務員の小松田を呼び止めた。
    「小松田さん」
    「潮江くん。どこかにお出かけ?」
    「えぇ、まあ。外泊で鍛錬をしに行ってきます」
    「そうなんだー。怪我しない様に気を付けてね」
    にこやかに出門票を差し出してくる小松田に、はい、と返事しながら潮江はサインを書いた。
    筆を手渡そうとした時だった。
    ふと思いついて潮江は口を開いた。
    「あ、小松田さん──」

    「あ、食満くん。今から出るの?」
    「どうも小松田さん。ええ、街の方まで少し」
    「そうらしいね。さっき潮江くんに鍛錬がてら二人で街に行くって話を聞いたよ」
    箒で掃き掃除をしていた小松田が食満の姿に気付くと人懐っこい笑みでいってらっしゃいと告げた。
    サインをしようと思っていた食満は、出門票をもらおうと手を差し出した──が、目の前の小松田は何もしてこない。
    「小松田さん?」
    不思議に思いながら食満が名前を呼ぶと、ああと小松田が何かを思い出したかの様にポンと手を打った。
    そして持っていた箒を塀に立てかけると出門票を取り出して食満に手渡した。
    「潮江くんが一緒にでかけるからって言ってね──」
    手渡された出門票には潮江文次郎の名前の下に見慣れた恋人の字で食満留三郎と書かれていた。

    end.
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