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    スシダ34

    行く先のない文章達。

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    スシダ34

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    真夏の暑さを忘れました。

    #文章
    articles

    日射病になりそうな強い日の差す夏の昼、アスファルトの上で揺れる陽炎の向こうに、君が見えて足を止めた。
    ゆらゆらと歪む世界で君は、静かに笑っている。
    無意識のうちに足を一歩踏み出せば、君は笑いながら逃げていった。ふと、逃げ水という単語を思い出した。
    遠くの地面が水で濡れているように見える気象光学現象。近づくとそれが遠方へ逃げてしまうように見えるからこう呼ぶのだと、何で知ったんだったか。
    君に似てると思った。いつだって向こうからこっちを見て笑っていたから。逃げ水と同じで、近づこうとしても近づくたびに君は遠くへ行ってしまって、距離は永遠に縮まらない。走って追いかけても、遠くなる背に目一杯手を伸ばしても届くことは決してなくて。
    終わらない鬼ごっこだと思った。私が鬼で、君が逃げる側。
    ねぇ、死んでも追いつけない鬼ごっこは、追いかける先がなくなったから私の不戦勝になったよ。
    そう言おうとして下がっていた顔をあげれば、陽炎の向こうに立つ君は幻のように消えていた。まるで、そこに初めからいなかったみたいに。
    わかっていた。わかるはずだった。そこにいる君が本物でないことぐらい。
    君が私の前から消えてもう長いこと経つのに、遠くで静かに笑った君は、私の記憶の中の君のままだったから。どうして、一瞬でも君が生きていると錯覚したんだろう。
    揺らめく路面を確かな足で踏んで、君のことなんて忘れたふうを装って通り過ぎる。
    どうして私の前に現れたの、なんて一体誰に聞けばいいのか。尋ねる先もなければ答えてくれる宛もない。
    意味もなく走りたくなって地面を蹴った。首筋を、頬を流れる汗を乱雑に袖で拭う。
    白い日差しの下、蝉の音ばかりが頭を埋め尽くした。
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    スシダ34

    MOURNING真夏の暑さを忘れました。日射病になりそうな強い日の差す夏の昼、アスファルトの上で揺れる陽炎の向こうに、君が見えて足を止めた。
    ゆらゆらと歪む世界で君は、静かに笑っている。
    無意識のうちに足を一歩踏み出せば、君は笑いながら逃げていった。ふと、逃げ水という単語を思い出した。
    遠くの地面が水で濡れているように見える気象光学現象。近づくとそれが遠方へ逃げてしまうように見えるからこう呼ぶのだと、何で知ったんだったか。
    君に似てると思った。いつだって向こうからこっちを見て笑っていたから。逃げ水と同じで、近づこうとしても近づくたびに君は遠くへ行ってしまって、距離は永遠に縮まらない。走って追いかけても、遠くなる背に目一杯手を伸ばしても届くことは決してなくて。
    終わらない鬼ごっこだと思った。私が鬼で、君が逃げる側。
    ねぇ、死んでも追いつけない鬼ごっこは、追いかける先がなくなったから私の不戦勝になったよ。
    そう言おうとして下がっていた顔をあげれば、陽炎の向こうに立つ君は幻のように消えていた。まるで、そこに初めからいなかったみたいに。
    わかっていた。わかるはずだった。そこにいる君が本物でないことぐらい。
    君が私の前から消えてもう長 715

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    DOODLEルマはグノ時、仲良く生き残った乗員をぺろりますがその時何が起こってるか夕里子は知っています夕里子は「どうなってもこの人を信じ委ねる」と決め、ルマを勝たせてくれた
    そして正体を現したルマに消されるのを待つのみ、と大人しくしていた

    でもルマは夕里子を優しく抱き抱えるようにしてベッドに連れていった
    なんとなく何が起こるか、察しはついた
    「すまない、どうしてか我慢ができないんだ。君のことが愛しくて、こうする他にできない気がする、痛くはしない、すまない」
    他に経験はないがおそらくは、ひどく優しくキスをされた

    こうなったのは彼女の背後の悪神のせいに他ならない
    夕里子は理解していた
    認知の歪みを正せばルマは正気に帰るだろうか
    頬に手を添えてルマの認知に触れる
    ルマは不思議そうに目を細め、夕里子の手のひらを舐めた
    とろけた目はうっとりと夕里子を見つめる
    どうやら効果はないらしい

    しばし考え、ひとつの結論に至る
    なるほど、ルマが「夕里子が好き」なことは事実
    あの悪神がやっているのは、その気持ちのタガを外すこと
    認知の歪みはここには存在しないのだ

    「……好きになさい」
    悪神には腹が立つが、夕里子は目の前の女を好いていた
    悪神のことなぞ知らぬ彼女に要らぬ負担はかけるまい。その位の慈愛は持 507