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    なかた

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    なかた

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    ##A3!

    未完の綴至淫紋ネタ 身につけている真っ白いワイシャツのボタンに指かける瞬間、綴はいつもエリート商社マンとして働く至の姿を思い浮かべる。仕事が早く、ミスが少ないのはもちろんのこと。人柄は穏やかで優しく、容姿は端正。立っているだけで絵になる。まさに頼れる同僚であり、理想の部下であり、憧れの先輩だ。綴はそんな至の別の一面も知っているのだが、それはそれとして。一度スーツを身にまとえば、彼はオフィスに咲く高嶺の花のような存在になった。そんな至の肌に、今夜自分だけが触れることを許されている。その事実が綴の胸を高鳴らせた。
    「えっ」
     シャツのボタンを、上から順に外していく。インナーめくれば、至の脂肪も筋肉もない薄い腹が現れる。そのはずだった。
    「なんすかこれ」
     以前、似たような内装のホテルの一室で至の上半身を目にした時、ヘソの下にはほくろひとつなかったはずだ。それが何故か、今夜はその場所にハートマークに羽を生やしたような、不思議な模様が描かれている。
    「どう見ても淫紋でしょ。まぁ、これはタトゥーシール貼っただけなんだけど」
    「は? イン、モン?」
     知っていて当然という口ぶりで、至は綴の問いに答えた。けれど、綴のボキャブラリーの中には該当するものがない。聞き慣れない単語をたどたどしく復唱する。そうしたところで、分からない以外に感想を絞り出せなかった。分からない。とにかく至の意図がわからない。
     至は日頃、綴とは全く異なる方向の趣味に心血を注いでいる。そのため、彼が何気なく使う単語の意味や収集しているもの価値が理解できないといった場面は度々あるが、今回の至の思いつきはいつにもまして綴を混乱させた。
    「知らない? 我ながら結構エロいし、綴も興奮してくれると思ったんだけどな」
     興奮するどころか、急に夢から覚めた気分だった。至は気に入っているようだが、綴にはこの模様が刻まれたことでまっさらだった肌が急に汚されてしまったようにしか思えないからだ。
    「なんでまた急に、こんなことしようと思ったんすか?」
     綴が問いかけると、至は俯く。長いまつげが顔に影を落として綺麗だ。美人は三日で飽きるとは聞くが、長い付き合いになってからも至の顔立ちの美しさに改めて心奪われる。そんな瞬間が何度もある。思わず見惚れていると、至は意を決したように顔をあげて、口を開いた。
    「マンネリだって綴が言うから……」
    「えっ?」
    「ほら、ちょっと前に寮のキッチンで臣と」
     ヒント頼りに綴は記憶を遡る。男ばかり、しかも入寮するまで母親の手料理を食べていた者の多い劇団で、料理経験者は限られていた。実家にいた頃から家族の食事を用意するしてきた綴と臣は寮のキッチンでも、よく顔を合わせている。しかし、マンネリという単語が出たのは一度だけだった。
    「それって多分、一週間くらい臣さんも俺も帰りが遅くて飯の用意ができなくなりそうだから監督に頼みたいけど、そうしたらカレー三昧でマンネリになりそうって話をしてた時のことじゃ……」
     キッチンからも見渡せるダイニングルームに至の姿はなかった。もし、更に離れた場所で二人の会話に耳を傾けていたのなら、内容が正しく伝わっていなくても不思議ではない。
    「でも、その後至さんに飽きたとかも言ってなかった?」
     最初に聞いたマンネリの一言によっぽど心を掻き乱されたのか、その後の言葉も至には正しく届いていなかったたらしい。確かに、至が拾った単語だけを組み合わせれば、綴が至との関係性に不満があり、臣に愚痴っていると受け取ることもできる。しかし、それは事実無根。至の勘違いなのだ。
    「それは至さんとかすぐカレー飽きたって根をあげそう、って話っすね」
    「……マジ?」
    「おおマジですよ。信じられないなら今から伏見さんに確認しましょうか?」
     ここま来たら、徹底的に気がかりをなくしてやりたい。そう思って綴は携帯端末に手を伸ばしたが、至の腕にやんわりと阻まれた。
    「いいよ。それはさすがに臣に悪い」
     至の言う通りだ。一時的な感情に流されて無関係な仲間に迷惑をかけるような行動は避ける、というのは処世術に長けた至らしい選択だ。直接的にではないが、巻き込んでしまった臣に心の中で謝りつつ、綴は至の方へ向き直る。
    「飽きたなんてとんでもない。むしろ、今夜はいつもと違いすぎて戸惑ってるくらいです」
    「これのせい?」
     長い指がしなやかに示すその場所には、相変わらず馴染みのない模様が存在していた。
    「綴は知らないかも知らないけど、淫紋っていうのはエロ同人誌では定番のアイテムで──」
     好きなものについて語る時の至はいつになく饒舌になる。つい先ほどまで、飽きられているのではないかという不安で曇っていた瞳もらんらんと輝いている。綴の目の前にいた、アンニュイな表情が魅力的な男はいつの間にやら元気なオタクと入れ替わっていた。
    「あの……至さん」
     家族のような存在が待つ、寮から遠く離れたホテルのベットの上。そんな場所でエロ同人誌の定番アイテムの説明を聞かされているという状況はかなりシュールだ。普段はいくら二次元の推しが好きでもいいが、今だけは三次元の自分に集中してほしい。そう願いをこめて綴は至の名前を呼ぶ。
    「とにかく、淫紋あるってのいうは、いつもよりエッチになってるってことだから」
     至の方も長々と自分の世界に浸っていた自覚があるのか、主張を完結にまとめると綴の手を掴んだ。絡む指が熱い。きっと期待しているのは綴だけではないのだ。
    「そういう体でよろしくお願いします」
     至は畏まった口調で断りを入れながら、綴の腕を持ち上げると、手の平に頬を擦りつける。気持ちよさそうに目を細める至を見ていると自然と下半身が落ち着かなくなった。
    「若いな。もうムラムラしてる?」
    「あっ、ちょっと……」
     いきなりジーンズの上から股間をなでられ、綴は体勢を崩した。それを好機とばかりに至は手際良くベルトを下ろすとジーンズのファスナーを降ろす。ボクサーパンツ一枚だけになると、性器がいまどんな状態なのかもう誤魔化しようもなかった。
    「じゃあ、まずは口でしてあげるね」
    (至さん、いつも口でするのは顎が疲れるから嫌だって言うのに……)
     飽きられているのではと懸念したことが取り越し苦労だったと分かりよっぽど機嫌がいいのか、本当にいつもよりエッチになっているのか。今夜の至はやけにサービスがいい。
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