失敗した。
カフェで紅茶を一口飲みながらそう思うのには理由がある。
仕事が休みの今日。家にいるより新しいスーツでも買いにと、外に出たのが間違いだったのかしら。それともナンパ男に絡まれた女性に声を掛けたせい? いえ、職業柄無視をする訳にもいかないからそのせいなのかも……。でも、まさか助けてくれたお礼をしたいとカフェに連れられてこうなるなんて、誰が予想出来るかしら。
「ちょっと! 聞いてるの!?」
バンッとテーブルを叩いたせいでカップの中のコーヒーが揺れて溢れる。
「聞いてるわよ。けどね、あなたの言い分を聞いたとしても私に出来る事なんてないわよ」
「じゃあ、あなたはあんな女に獠ちゃんをとられても良いって言う訳?」
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