松井の腹筋が好きで舐めまくる豊前。そのままセックスしちゃうぶぜまつ豊前には少し変わった癖がある。
僕と豊前だけの秘密なのだけど、豊前は僕の腹筋を舐めるのが好きなのだ。いつから舐めるようになったのかはもう思い出せないけれど、身体の関係を持ってから言い出したと思う。
そりゃあ、僕だって最初は驚いたよ。
真面目な顔で「松井の腹筋を舐めたい」なんて言ってくるのだから。
言われた当初はちょっと何言ってるか分かんないですね、状態な僕だった。それも最初だけ。今ではもうそれが当たり前となっている。
◆◆◆
出陣から戻ると、豊前は部屋にいなかった。23時を既に回っているから、皆で風呂にでも入っているのだろう。僕と言えば、血で上着は汚れているし、全身が汗臭い。豊前が風呂から戻る前に着替えだけ済まそうと思ったのだけど、タイミングは待ってはくれなかった。着替える直前に豊前が戻ってきたのだ。
「松、帰って来てたんだな」
「た、ただいまっ。いま帰ってきたところ」
「おう、おかえり。ずいぶん遅かったじゃねーか」
「けっこう手こずってね。他のメンバーもボロボロさ。僕も早くお風呂入って来ようかな」
「松井、ちょこっと待って」
「待ってって言われても僕汗臭いから…!!」
「そぎゃんの関係なか。昨日からずっと会えてなかの知ってっか?」
「それは知ってるけどっ!仕事だろう?」
「仕事っつーのはわかってるとよ。けど、俺は寂しかったとよ。松井は寂しくなかったのか?」
「それは……」
それを言われてしまうと僕は弱い。そりゃあ僕だって豊前に会えない日は寂しいに決まっている。僕が汗臭いことは気にしていないのか、風呂上り、しかも洗い立ての寝間着を着た状態で背中から抱きしめられていた。
柔軟剤の柔らかい匂いと、豊前の香りが心地いい。加えて少し湿った髪が項にかかって、それだけで体温が上昇していくのが分かる。
「まつ」
これは、完全にスイッチが入ったときの声だ。息が首に、耳にかかってくるものだから身体が快感を思い出して疼いてしまう。
「腹筋、舐めてえ」
「うっ……」
誘うような手つきで脇腹を撫でるのはずるい。
「まーつ」
「わ、わかったよ…舐めたいんだろ?」
僕は体勢を変えてから、ゆっくりとシャツを捲った。豊前の唇が優しく腹筋に触れてきてじんじんする。ひょい、と肩に担ぎ上げられて隣のベッドのある部屋に軽々と運ばれてしまう。
豊前がどうして僕の腹筋に執着するのかは分からない。一度だけ聞いてみたら、「松井の腹筋は俺をくすぐるものがある」と言っていたけど、あれは答えじゃないと思う。
僕がぐるぐる考えていると、
「なーに考えてんだ?」と顔を覗き込まれた。
「な、なにも…」
嘘なのはバレバレだと思う。豊前は口の端を上げてにやりと笑った。このちょっと意地悪そうな表情が僕は好きだったりする。
湿った舌が腹を滑っていく。と、思えば唇で強く吸われたりもする。
腹筋をこれでもかと舐めた後は、胸、腕、脚と天辺からつま先まで舐められていった。
「ねえ、汗、臭いからっあ」
「松井は臭くねえよ。寧ろいい匂いがする」
「なに、いってっ。んんん、っ」
首にがぶりと噛みつかれたと同時に、後ろに強く突きつきられた。押し拡げられていく感覚がいまではもう快感だ。
枕を握っていた手に、豊前の手のひらが重なる。その体温が愛しくて、いつも泣きそうになるんだ。
こんなに甘やかされたら、僕は豊前がいないと生きていけなくなってしまうよ。
豊前は、枯れた僕の心を潤してくれたオアシスみたいな人。
豊前が離したいって言っても、もう離してあげられそうにない。