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    FP2ndhayusyo

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    生花に囲まれて眠る乱数の話

    ※お葬式表現
    ※ちょっとクローンネタ

    #飴村乱数
    AmemuraRamuda

     白いシーツの上に、生花を散らす。今日のパーティーで飾られていた生花。パーティーが終わった後、「これ、貰ってもいい?」って聞いたら、丁寧に包んで渡してくれた。簡易的な花束を抱えたまま、電車に乗り、シブヤの街を抜けて、僕の部屋へ辿り着いた。靴を脱いで、ベッドに向かって、一輪一輪、束の中から抜き出して、花をベッドの上に落としていく。規則性も、デザイン性も無い。たまたま手に取った花を、適当な位置に落としてゆく。無造作に置かれたお花も綺麗。花自体がきれいだから、こちらがデザイン性を加えなくとも、ある程度美しいものになる。乱数はそれを知っていた。

    「わぁ、きれい」
    この世に出て来たばかりの頃、人が花に囲まれて眠っているのを見た。白い花が多かった。箱の中に隙間なく詰め込まれて、その中心に人間が眠っていた。アマヤドが花を散らす。赤、青、黄、無造作に落ちたそれは、白い花の上に乗って、色濃く存在を示していた。
     きれいで、楽しい。この中で眠る人間は、きっとお花がいい匂いで、見た目もきれいな花達に囲まれて、楽しい気持ちになっているに違いない。いいな、羨ましい。
     乱数はそう思って、箱の淵に手を置いて、それを眺めていた。

     それは、僕が初めて見たお葬式だった。人は死ぬと、棺桶に入れられて、その周りに沢山の花を手向けられる。故人が好きだったものも一緒に、天国に送るらしい。生きている人は、泣きながら、棺桶の中に花を入れていく。悲しいお別れ。もう二度と会えないから、そんな理由をつけて泣く。それから、今までの感謝とお疲れ様の意味を込めて、花で最期の道を飾る。
     なんだ、全然楽しそうじゃないじゃん。
     二回目のお葬式で僕はそう思った。仕事で取引があった、繊維メーカーの社長、彼が眠る棺桶を見る。彼は仕事中突然倒れて、そのまま還らぬ人となった。急なお別れに、社員も、僕みたいな取引をしていた人たちも、皆泣いている。当の社長は、きれいな花達に囲まれて、笑っているのに。花の良い匂いに包まれて、楽しい夢を見ているに違いないのに。



     貰った花を全部散らしたベッドに、正面から倒れ込む。その衝撃で、僕の周りの花が舞った。シーツに埋もれた顔を横に向けると、黄色いガーベラが目の前にあった。鼻を寄せて匂いを嗅ぐ。ああ、やっぱり、いい匂い。他の花の香りも微かにする。僕を包む沢山の花。造花じゃダメ、生きた花じゃないと、この匂いは生み出せない。寝返りを打って、横向きに寝そべる。白いミニバラが目に留まった。幾重にも重なった花びらと丸い形が可愛い。どこを見ても、綺麗な花が目に入る。いい場所だ。このベッドは、今、幸せで楽しい場所になっている。
     ほらね。
     棺桶の前で、悲しそうな顔をしているアマヤド、泣いている繊維メーカーの社員に向けて、頭の中で話しかける。
     お花に囲まれた場所は、こんなにも楽しい。悲しくも、苦しくも無い。僕が一番最初に思った通り、綺麗でいい匂いがして、楽しいんだ。
     乱数は一人で、ご機嫌にほほ笑む。例えば僕が明日、ヒプノシスマイクで死んだとしても、それは悲しい事じゃない。花に囲まれた僕は、きっと幸せで、楽しい夢を見ているんだろう。昨日死んだクローンも、もっと前に、実験に使われたクローンも。僕が今ベッドの上でお花に囲まれて寝ているから、これが彼らのお葬式ってことにして。花に囲まれた僕らは、これからはずっと楽しくて仕方ないはずだ。
    「はぁ、楽しいなぁ……」
    乱数はうっとりと、白いユリを撫でた。

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