葉山隼人と比企谷八幡葉山は俺とは違って陽の光を満遍なく浴びたみたいな所謂、王子様、みたいな奴なので、ここまで目が腐って濁りまくってしまった俺とは関わる以前の話だった。
誰にも話されないで誰にも迷惑がかからないといい感じの日常を送ってきた俺は、平塚先生の命令により奉仕部へと無理矢理入部させられた。
葉山とはその奉仕部での活動の中で度々会話を交わす、くらいの顔見知りにはなっていた。
正直言ってあいつとはいい思い出がない。最初から今の今までで俺たちは認めあったり仲良くなったり、そんなことはひとつとして無かった。互いに顔を合わせれば意見の食い違いしか起こらなくて、いつも喋りたい相手だとは思えなかった。
とにかく、そんなあいつを俺は心の内で少し苦手な相手とだけ認識していた。
俺とは無縁な明るい笑い声が教室に響いて、それは葉山達のグループから発生しているものだというのは明確だった。
知らず知らずのうち葉山たちの方へ意識が向いてしまう。
俺はかなりの頻度でそちら側へ意識がいってしまうらしく、由比ヶ浜がメールで俺を気持ち悪いだの怖いだのと罵るメールがくることが多々あった。確かに自覚はあるけど酷いよ由比ヶ浜さん……。
しかし今回は少し違った。窓際の方へ持たれかかる葉山と目が合ってしまったのだ。
葉山は俺と目が合うと周りにバレないよう、だがそれでいても爽やかな笑顔で反応する。途端、由比ヶ浜の注意のメールとは違う恥ずかしさが込み上げた。
やってしまった、感が否めず俺はそのまま伏せて午前の授業を過ごしていた。