今日のカイアサ《フォ学 #1》 学校帰りにふらっと寄った複合商業施設内のゲームコーナーをみていると、気になるUFOキャッチャーの台を見つけた。
「助けてください……発注ロットを間違えました?」
「すごくたくさんあるってことだな」
張り紙のされた台の前で、アーサーとカインは立ち止まり中を見ていた。よくあるタイプの台だが中にはカプセルが入っていて、落とすことができたら係の者に渡すと景品がもらえるらしい。しかし張り紙に書いてある通り担当の者がいわゆる発注ミスをして在庫過多になっているため、通常より取りやすい形で提供しているとのことだった。
「景品は、食パンのクッションだそうだ」
「面白いな! やってみるか」
台を飾っているポップを興味深そうに見ているアーサーの横で、カインは丁度財布の中に入っていた500円玉を投入した。500円玉を入れると、100円で一回のところ6回遊べるのである。
「頑張れ、カイン!」
「まかせろ!」
つい先日、ルチルと同じような場所に遊びにいったときに運良くぬいぐるみを何体も取ってすっかり自信がついたカインだったが、今日は丸いカプセルとアームの可動域にやや苦戦して、6回ともいいところまで行くものの途中で落ちてしまった。
「いけそうな気がするんだけどな~」
諦めようかどうしようか、迷いながらカインが財布の中の100円玉をとろうとしていると、硬貨を投入したジングルが聞こえてきた。ふと台を見れば、クレジットは残り6。アーサーが500円玉を投入したのだ。
「アーサー、」
「大丈夫だ。取れる流れが来ている」
「ありがとう! あとで返すよ」
「構わない。カインがとるところを見せてくれたら、それで」
そんな風に言われたら、どうにかとりたい。意地になってもとれないときはとれないが、前6回の結果を振り返りながら試した結果、3クレジットめで落とすことができた。
しかし余った分のクレジットは返ってこない仕様なので、せっかくだから少しやってみたいというアーサーに譲ると、残りのクレジットで見事カプセルをひとつ落とすことができた。
「やった……! カイン! お揃いだな!」
「アーサー、上手いな! さっそく係の人に見せに行こう」
そうしてふたりは喜色満面にカプセルを係員に見せに行き、ひとつずつ景品の食パンクッションを得た。想像していたよりもふかふかとしていてそれでいてもっちりとした手触りが気に入ったらしいアーサーは撫でたり抱きしめたりしながらにこにこと嬉しそうだった。
「カイン、いいことを思いついた」
そうして、アーサーはクッションを小脇に抱え直すと、カインと腕を組み言った。
「サンドイッチみたいじゃないか?」
「っかわ……面白いこと言うなあ、アーサー! 次の曲のモチーフに良さそうだ!」
苦し紛れに誤魔化したものの組んだ腕は振りほどけず、カインはアーサーとサンドイッチになったまま施設内を歩いたのだった。