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    いぬさんです。

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    いぬさんです。

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    12話目です。

    12様子がおかしい私を心配したパパとママに何かあったのかと聞かれたが、「悟とケンカした。悪いのは私だから悟を叱らないで」とだけ伝え、その夜は泊まらずに家まで送ってもらった。
    親たちが電話で何か話していたけど、「子供のケンカだから」という感じだった。


    あの日から、私はバリアを通常運転に戻した。2度と不可にしないと誓った。

    毎週金曜の夜には必ず本家に行ったが、悟に会う事はできなかった。
    私は謝る事すら拒否されたのだ。
    自分が悪いのだから仕方ないが、会えないのは悲しいし寂しかった。
    親たちもこれはちょっと根が深そうだと夏休み旅行はキャンセルされた。
    私が行かなければ、悟は普通に過ごしているとママが話してくれた。

    ずっと会えないまま数ヶ月が過ぎ、私は中学生になり、悟は小学校に上がったと聞いた。中学生になって部活に参加するようになり、本家に行けるのは月に1~2回。泊まりではなく日帰りになった。

    親たちはいくらなんでもケンカが長すぎるといってヤキモキしていたようだが、私はリアルが忙しく恋愛こそしてはいなかったが悟に会えない寂しさは幾分和らいでいた。

    時々ママが私の写真を撮りたいという。悟の部屋にわざと飾るのだそうだ。飾ってあると気付いた瞬間に廃棄されるので、即座に新しい写真を飾っていたちごっこをしているらしい。私も悟の写真が欲しいと言ったら、撮らせてくれないそうだ。恐ろしく勘がいいので隠し撮りもできないと
    嘆いていた。
    ちなみにママは私の事は隠し撮りしていると白状した。いつになるか分からない私の結婚式の為にせっせとアルバムを作っているらしい。私は誰と結婚するのかと素朴な質問をしたら、「悟以外に誰かいるの?」と逆に質問された。




    再会は突然だった。

    本家にはずっと定期的に行っていたが、悟は私に会うことを断固拒否していて、流石の親たちも呆れて何も言わなくなっていた。

    そんな中3の秋の下校時だった。
    クラスメート数人と校門を抜けると悟がいた。

    背が伸びた。
    今小学校3年生のはず。
    多分同い年の子供達よりずっと背が高いだろう。
    整った顔立ちと隠さない白髪。
    長く白い睫毛。
    大きな碧い瞳。

    「実」

    悟が私を呼んでいる。

    クラスメートがざわめいている。
    私は動けず何も言えずにいた。

    「実」

    もう一度呼ばれてはっとする。


    「実。じいちゃんにそろそろお迎えが来る。実を呼んでる。行こう。」

    差し出された手を掴んで一緒に走り出した。
    クラスメートの声があっという間に後ろに消えた。



    私はあまり身長が伸びず、160センチくらいだ。悟はすでに私くらいある。
    あんなに小さかった悟の手が私の手を力強く握って痛い。

    泣いたら走れなくなる。
    私の手を引っ張って走る悟について行けなくなる。
    私は涙を堪えた。

    再会の喜び涙なのか、おじいちゃんが危篤だと言われたショックなのか、私には分からなかった。


    おじいちゃんが伏せっているのは知っていたし、本家に行く度に必ず顔を見せていた。
    あまり良くない、と言われてはいたけど、もっとずっと先だと思っていた。

    本家につくと悟は手を離した。
    一言もしゃべらず二人でおじいちゃんの部屋に行き、枕元に並んで座った。

    「じいちゃん。実が来たよ」

    悟が話しかけるとおじいちゃんはうっすらと目を開けた。

    「実。幼いお前に酷いことをした。まだ謝ってなかったな。本当に申し訳なかった……」

    謝らないで欲しかった。
    あの頃は生まれて初めて心から憎んだ人だったが、今では大好きなおじいちゃんだ。

    「お前たちは魂の対だ。二人で一人なんだ。」

    悟は黙って聞いている。

    「ケンカしたら仲直りしろ」
    「お互いを尊重して大事にしろ」
    「お前たちはまだ子供だ。間違う事もあるだろう。それでもいい。」
    「ただ、進め。」
    「二人で手を取り合って、生きていけ」

    そう一気に言うと、おじいちゃんは静かに寝息をたてはじめた。

    「はい」

    悟は静かに言った。

    私は涙を止められなかった。



    おじいちゃんの部屋を出て、手を繋いで久しぶりに二人でお社まで歩いた。
    私はずっと泣いていて、悟はずっと黙っていた。

    お社についてから、私は座り込んで膝に顔を埋めて気がすむまで泣いた。
    悟は隣に座って空を見上げていた。

    「悟……ごめんね……」
    「うん」
    「私ね、あの時……」
    「もういいよ。分かったから。」

    私はまた泣いた。

    「実、自分で気付いてないの?」
    「……なにが……?」
    「あぁ、あのメガネかけてないからわからないのか」
    「?」
    「今、というかここに来てから実のバリア全くないよ」
    「え」


    顔を上げると目の前に悟の顔があって驚いた。

    「ちなみに」


    「俺も術式解いてる」


    ほんの一瞬触れて離れた。


    「実の匂い懐かしい」


    そう言って笑う悟も懐かしい匂いがした。



    おじいちゃんはその夜、静かに息を引き取った。
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