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    いぬさんです。

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    いぬさんです。

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    28話目です。

    28昔みたいに悟が座っている足の間に入り、悟の胸に背中を預けた。

    昔と違うのは、私の体が悟の胸のなかにすっぽりおさまっても余るくらいということだ。

    悟は時々私の頭や首筋にキスしたりしてたけど、早くセックスしたいと誘っているのではなく、純粋な愛情表現だった。

    私は自分の名前が何故「みのる」なのかから話しはじめ、6歳の誕生日の前日に本家に連れていかれたこと、そのまま本家に残されたこと、凪さんとの出会い、悟が生まれた時の事を話した。
    できるだけ時系列をまとめ、私が見て、聞いて、実際に体験して、感じたこと、そのときの気持ちを具体的すぎるほど具体的に話した。
    悟は基本黙って聞いていたが、初めて結ばれた日の事を話すと
    「リアルすぎて勃ってきちゃったからその話しやめて?」
    と言った。

    あの日見た光景や、戦闘態勢に入った悟を怖いと思ったことも正直に話した。
    そしていつの間にか札幌にいたこと、病院での生活、私が負った傷のこと。本家との連絡が絶たれ、荒れに荒れた事。
    子宮とすい臓がない事を知った悟が私の背中で一瞬息を止めた。
    それでも構わず私は話し続けた。

    そしてある日、病室に凪さんが来たということ。

    長いこと話していた。
    何度か飲み物を取りに行ったりトイレにも行ったがぶっ続けで話した。

    私がアパートで生活しているところで話は終わった。



    「いやいやいやいや。どんだけ中途半端よ」

    思いっきりしかめっ面をして悟が言う。

    「えー?どのへんが?」

    「回収してない伏線とかあるでしょ」

    「ないない」

    「じゃあ、あいつに何を教えてもらったの」

    『あいつ』は凪さんの事だろう。

    「それは女同士の話よ」

    「うーわひでぇ」

    「実に全部話して何がしたかったんだろうな」

    「さぁ……。話す気はなかったかもしれないけど、顔を見たら話しておかなきゃって思ったのかもしれないね」

    「実は怒ってないのか?」

    「五条家を?怒ってたよ、もちろん。凪さんの話を聞いても受け入れ難かったし、たくさん考えた。でも、凪さんが私たちを愛してくれていたのは真実だし、凪さんはちょっと間違ってしまっただけ。おじいちゃんも五条家と悟を守ろうとしてやり方を間違えた。おんなじよ。私はおじいちゃんの事も好きになったし」

    「お前のそういうところなんだよなぁ」

    「悪いところ?」

    「……いや」

    「なによ」

    「お前のそういうなんでも受け入れて許しちゃうところが俺は心配だし____」

    「心配だし?」

    「まあいいや」

    「気になるでしょうが」

    「腹減った!」

    「あ、そう」

    私たちは「札幌といえばラーメン!」とラーメンを食べに行く事にした。観光客も多く訪れるラーメン屋さんが近所にあるというと悟は喜んだが、「歩いて15分か20分くらい」というと「タクシーがいい」と駄々をこねた。
    結局散歩がてら、久しぶりに手を繋いで歩いた。

    キョロキョロする悟。

    「どしたの?」

    「いや、護衛がちゃんといるなぁって」

    「いるよ。ずっといる。定期的に人は入れ替わってるみたいだけど。」

    「実に気付かれてるなんて護衛の意味あんのか?東京戻ったら〆るわ」

    「やめてあげて」

    時々すれ違う人が悟を見てはっとする。
    悟は赤ん坊の時から端正な顔立ちをしていてかわいかったが、今は程よく筋肉がついた高身長でスタイルのいいイケメンになった。

    「人の顔ジロジロ見てんなよ。見慣れてるだろ」

    「ごめん」

    私は急に恥ずかしくなった。
    口が悪くて性格的に問題はあるかもしれないが(多分ある)、端から見れば悟は超絶美形だ。
    全てにおいて可もなく不可もなくな私が手を繋いで歩いていることさえ罪に思えてくる。

    「何度でも言うけど実はかわいいよ」

    「…………ありがと」

    見透かされた。
    穴があったら入りたい。

    「そういえば、護衛の人がいるってことはまだ私は安全じゃないってことで、安全じゃないってことは私たちまだ会ってはいけないのでは?アパートに来るとき誰にも止められなかったの?」

    「ダメだろうけど、あいつらじゃ俺を止めるなんてまず無理だし、親父も行ったら行ったで仕方ないと思ってるんじゃね?」

    「なるほど?」

    「3年ぶりのデートを邪魔するような野暮はしないでしょ」

    私たちは夕方の混雑する店でラーメンを食べ、観光客の人たちに「芸能人の方ですよね?!」と囲まれ、いそいそと逃げるように帰途についた。

    アパートについて一息ついてから私はお風呂の準備をはじめた。
    「お風呂どっちが先に入るー?」

    「は?一緒に入るけど」

    「正気?アパートのお風呂狭いしお風呂は一人で入りたいよ」

    私は暗いお風呂でないと入れない。
    一緒に入れば電気をつけるだろうし、悟の前で吐きたくない。

    「ずっと一緒に入ってたじゃん」

    「それはあなたが小学校にあがる前!」

    「ケチー」

    悟は舌を出して抗議したが無理なものは無理だ。

    「いいよーだ。実先に入ればー?」

    拗ねたか。
    私は着替えを持って脱衣所に向かう。

    「あ、悟の着替えなかったね」

    「着ないからいい」

    ニヤリと笑う。

    「こわいこわいこわいこわい」

    脱衣所のドアを閉めてからもう一度ドアをあけて悟に忠告する。

    「覗かないでよ、ずぇーーーーーーったい」

    「全部見たことあるんですけどねぇ~」

    悟はまた舌を出して抗議した。



    体を洗ってから湯船に浸かると、心がほぐれていくのが分かった。また悟と笑い会える日が来たことに感謝した。

    「なんで電気つけないの?」

    脱衣所から声がする。

    「こらーーーーーーーー!!!入ってきちゃダメって言ったよねーーーーー!!!」

    「言われてない。覗くなとは言われた」

    お風呂場の折戸が勢いよく開く。
    暗くてもわかる。悟は全裸だ。

    「電気つけていい?」

    「いやいやいやいや、おかしくないですかーー!!!」

    「おれが暗くて滑って転んで頭打って死んでもいいの?!」

    電気がつく。

    一瞬目が合ったあと、私は悟の全裸を見て叫んだ。

    「ぎゃーーーーーーーーーーーー!!!」

    そこには自分が知らない男の人の裸があって私は混乱した。悟は本当に大人の男性になっていた。私が知っている悟全体の形とはまるで違う。

    「ひとの裸見て叫ぶって俺をなんだと思ってるの」

    「恥ずかしいからこっちを見ないで!!」
    私は顔を背けた。

    「だからなんで人の裸を見るのが恥ずかしいのか全然分からない。俺だよ?」

    「うぅ……ひどいぃ…」
    私は半泣きになった。

    「うわ、しかもなんか入れてんの?お湯真っ白じゃん」

    「エモリカです!」

    「商品名聞いてねぇよ」

    「エモリカ好きなんです!」

    悟はシャワーを出して洗い始めた。
    流す時は遠慮なく飛沫を飛ばしてくれた。

    「ちょっと!!こっちにかかるからもう少しおとなしく流してよ!!」

    「はいはい。もう少しで終わりますからね~」

    私は悟がシャワーを使っていることで逃げることもできず、私と悟、どちらも傷を見なくて済むようにするにはどうしたらいいかと考えた。しかし、こんな狭い場所では難しく、悟が先に出て行ってくれる事を願うばかりだった。

    「はいちょっと詰めてくださ~い」

    悟が無理矢理湯船に入ってくる。

    「うぅ……狭いぃ……」

    「いいねー」

    狭いのでいつも通り後ろから抱きかかえられる体勢にしかできない。それ即ち悟は私の体を触り放題。

    「実のちっぱい……」

    「ころすぞ!」

    「怖いー」

    全身をくまなく撫でられる。
    ダメだ。お湯がいくら白くても、触ればわかる。傷口は肉が盛り上がっているし、ひきつれてるところは素肌と触った時の感触が違うのだ。

    悟の指が傷をなぞる。

    無言で、私の体の傷を探している。

    悟が悲しんでいるのがひしひしと伝わった。

    まぁ、どんなに見せない努力をしても、体を重ねればどうせ分かると思い直し、私は体の力を抜いた。

    「ごめんな。痛かったよな。」

    そう言うと悟はお風呂からあがった。

    悟が脱衣場でドライヤーを使ってる間も私はお風呂からあがれなかった。できるだけ自分の傷を見せたくないし、私も自分で見たくなかった。


    そう。私はのぼせた。




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