雨と飴 全年齢向け ぽつり。雫が頭上に落ちる感覚がして、1歩踏み出したその足を引っ込めた。どうやら小雨が降っているらしい。予報では曇りとだけ出ていたが、梅雨真っ只中のこの時期ではよくあることだ。それなのに、生憎今日は折り畳み傘を持ってきていない。1度雨を自覚してしまうとどうやら低気圧に弱いらしい俺の頭は途端にずしんと重くなり、目の奥に鈍い痛みが走った。それとともに気分まで沈みだしそうになったのを、頭を振って切り替える。
「……歩くか」
早くあいつが待ってる家に帰りたい。その一心でまた踏み出した。タクシーを使うか、目の前にあるコンビニで傘を買うとかいう手段もあったが、そんなことをしたらもったいないとあいつに怒られてしまうのは目に見えている。俺もあいつもそんな些細な出費を気にする必要なんて一切ないくらい稼いでいるというのに。おそらく家で俺の帰宅を待ち侘びているであろう恋人の姿を想像したら、少しだけ頭痛が軽くなった気がした。
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