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    Hino

    夢も見るし腐ってる人。事故防止のためにキャプションは必ず確認してください。

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    Hino

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    🌸大尉をお迎えに行く話 ルートb

    これから何処へ行こうか。
    地球に降りて観光でもいい。
    いや、家に帰って近場の商業施設でありふれたカップルのようなデートでも。
    遊園地とか、一緒に行ってみたかったかも。


    うん、分かってる。
    私達はずっとここに留まるのだ。
    寂しくはない。大尉が共にいてくれるのだから。
    普通の人生を歩む事はできなかったけど、私は今、幸せなんだ。



    「貴方達はまだこちらに来てはいけないわ」

    ふと声が聞こえる。
    振り返れば可愛らしい少女がそこにいた。


    「貴方が彼を導いてあげて」


    どう言う意味、と聞き返そうとしたが視界がホワイトアウトしていく。

    私がそうしたよたように...

    少女の声が反響していく



    けたたましいアラートの音がコックピットを満たしている。
    やけに頭に響く感じがして不快感から目を覚ます。
    私、死に損なったのか。
    脱力感が身体を襲う。
    あれだけの攻撃を受けてよく機体が持ったなと自嘲気味に笑う。

    ふと、思う。
    私が無事なら大尉の機体は?

    モニターを後方に回せば損傷は激しいもののコックピット付近はほぼ無傷。

    慌てて自分の機体から外に出て大尉の元へ向かう。

    神様 お願い

    緊急ハッチを握る手が震える。
    扉が開き切るのが待たず、開きかけの隙間に無理矢理身体を捻じ込む。


    「大尉!」


    ヘルメット越しに出血が見えて慌ててハッチを閉める。
    再度大尉に向き直り怪我の状態を確認する。

    出血量はあるが呼吸は安定している。
    パイロットスーツのポシェットから緊急キットを取り出して簡易的な処置を施していく。
    それでも大尉は目覚めない。

    「大尉、ゾルタン大尉、起きてください、お願いします...お願いします...」


    夢から醒めなければよかった。
    ぽつぽつと落ちていただけの涙が嗚咽に変わるまでさして時間はかからなかった。
    みっともなく子供のように泣きじゃくる。
    置いていかないで、

    「喧しい。患者の前で辛気臭い面晒すんじゃねェ」

    ごつん。
    割と力加減のない拳骨が無防備な脳天に刺さる。
    一瞬息が詰まって別の意味で涙が出てくる。

    顔を上げればしかめ面の大尉と目が合う。
    驚きで涙が止まるも、安堵感からまた目頭が熱くなる。
    あまりにも酷い顔をしていたのだろう「俺さァ、今調子悪ィから気遣いなんぞねぇからな」と言いながらグイグイと涙を拭う。

    暫しの静寂。
    最初に破ったのは大尉の方。

    「あーあ、犬死にもならなかったな」
    「命あっての物種ですよ」

    じっと大尉が私を見つめる。
    いつになく真面目な表情。


    「俺帰るとこなくなっちゃったよ」



    「ナァ、前に言ってた事、いやさっきか?アレ覚えてっかー?」


    自然と顔が綻ぶ。
    本気で待っていてくれたのだ、それなら約束を果たそう。

    「大尉、このまま何処かに行きましょうか」

    その返答を聞いて大尉がいつものニヤッとした笑みを浮かべる。

    「ハハッ!愛の逃避行ってヤツか!俺も隅に置かないな?」

    口では茶化す癖、抱きすくめ私の事を離す気はないらしい。
    私も離れるつもりはないのだけれど。


    今度こそ、私は彼を連れて狭い檻を抜け出そう。

    背後に気配を感じてそちらを見やれば不死鳥が飛び立とうとしていた。

    ありがとう、私達まで救ってくれて。

    その言葉を待っていたかのように金色の機体が宇宙へ駆けていく。
    青い軌跡を2人で見送る。


    間もなく音声通信が届いた
    「こち...ガラ........ル.......生存.....がい...返答を....」

    私は音声通信のスイッチに手を伸ばした。
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    なすびのな

    DONE歌うま男性Vsinger、音御光歌(おとお こうが)くんが、とある日の挑戦枠配信で演じてくれた執事設定が個人的にとてもよかったので書きました。
    最後の台詞はご本人が配信で言ってくれた台詞を引用させていただだきました。

    ※執事設定なのでご本人とキャラが違います。
    ※何も起こりませんが一応夢として書いています。苦手な方はご注意ください。
    「眠れない…」

     ぽつりと呟いたその声は、月明かりに照らされた部屋の隅に残る暗がりに吸い込まれていく。
     窓の外には明るく丸く、黄色い月が浮かんでいて。ふと脳裏に、月とは真逆の、太陽の光をまとったように笑う執事の姿が思い浮かんだ。
     ベッドの中から抜け出し、素足を履物に落として部屋を出る。かちり…と扉の閉まる音が広々とした廊下に響いて、少し体を縮こまらせた。

    「いかがいたしましたか?」

     ゆっくりと静かに、長い廊下の絨毯を踏みしめて進むと、その先にある扉をそっと開く。柔らかな照明の下で書類に伸ばしかけた手を止め、執務室でその日の仕事を片付けていた彼が顔を上げた。

     かすかな灯を反射してその瞳が優しく輝くさまに、もやもやと胸の奥にわだかまっていた不安がほどけていくのが分かる。
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    tomoe1218

    DONE2020/5/5発行のるろ剣夢アンソロジー「花綵-はなづな-」(@ruroken_ym_x )に寄稿させていただいた斎藤一夢小説です。再録解禁になったので早速。わたしは常に再録したいマンなので……ポイピク使ってみたかっただけなので、いずれ支部にも上げます。アンソロジー、まだ在庫あるみたいなのでよろしかったら〜。素敵なるろ剣夢がたくさん見れます。表紙からやべーですんで……
    【るろ剣】だいきらいなひと【夢】 人は私を小町と呼ぶ。もちろん本名ではないのだけど、いつの間にか定着してしまった。親しみが込められた呼び名だし、嫌なわけではなかったからそのままにしている。
     どうして小町なのか。理由は単純。私が蕎麦処で働く小町娘だから。ただ真面目に働いているだけなのに、蕎麦小町なんて呼ばれるようになっていた。率直すぎて素直に喜べないけれど、町に溶け込めているならそれでいい。
    「はい、天ざる二ツ、お待ちどおさま」
    「ありがとうねェ、小町ちゃん」
     私が働く蕎麦処は小さな店で、寡黙な店主、店員も私ともう一人だけだ。もう一人の店員である静さんは初産を控えていて、いまはお休みを取ってもらっている。なのでいまは実質二人でこの店を切り盛りしていた。幸いというかここは大通りではないし、お客さんも気心の知れた常連さんばかりなのでなんとかやれている。私が蕎麦小町ともてはやされた頃はご新規さんもたくさんいたけど、何度も繰り返し通ってくれるのは親父さんの蕎麦にこそ惚れた人だけなのだ。
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