軍ぱろ(年の差)快新一番始めに「好き」をくれた貴方を。
ずっとずっと探していたんだ。
次に会えたら絶対に
離さないと、心に誓っていた。
最初で最後の
この国が隣国との緊張の高まりを受けて軍を強化し始めたのはここ数年のことだ。いつ戦闘になってもおかしくない状況下で、自国を守りたいと男女問わず多くの市民が兵に志願した。
そんな中俺、工藤新一は義務の1年間の訓練入隊からずっと、7年程。何故か少尉にまで階級が上がっていた。今日はその祝いにと、戦友達が酒を持って集まっていくれいた。…飲みたかっただけではないかという説が俺の中では遊説だ。それはまぁ、とにかく。
酔いつぶれてしまった戦友多々。部屋は酒臭くなるし散々である。いや、気持ちはとてもとても嬉しいのだが。4月下旬。暖かくもあるけれど、まだ寒暖差があり本日は肌寒い方だった。放っておくのも可哀想であるし、酔っていない戦友には己が行くから、と止められもしたのを大丈夫だと言って部屋を出てきたのは自分自身である。自身でぽやぽやと酔い始めてきたな、と自覚できる程度には酔っているので、酔い覚ましに。
借りてきた毛布で前が見えない。足元を見ながら少しずつひんやりした廊下を進んでいく。
「………ったく、わかんねー…」
戦争にはなっていないが、小さな衝突はあるのだ。小競り合いに駆り出されること数度。なぜそれで階級が上がったのかよくわからないが。…だって俺は、
「…?」
カツン、と自分以外の廊下を歩く音が聞こえた。どうやらこちらに向かってきているらしいその音は、少々小走りだった。それだけなら別にいいのだが、近づいてきた気配と靴音は、邪魔になるだろうと止まっていた俺を追い抜いてからピタリと動かなくなった。まぁ…いいか、そう考えなおしてまた歩き始めようとした時だった。目の前の毛布が消えたのだ。
「…あ!やっぱり!」
「…………は?」
変わりに目の前に現れた、癖毛の俺より若いであろう一人の男が至極嬉しそうに笑っていた。
「あの…?」
「失礼しました、お久しぶりです!」
「………」
立派に敬礼してみせた男。久しぶり?と言うことは初対面ではないハズ。うーん?記憶を遡るも答えが見つからず。
「すみません、どちら様でしょうか…」
「…!」
何だろうか、しょげた犬耳と尻尾が見えた気がした。申し訳ないな…と思っていると、若干顔を伏せたままの男がぽつりと何かを呟いた。
「な、なにか…?」
「………忘れちゃった?コナンさん」
「……あ」
その偽名。真っ先に思い出したのは、路地裏。雨。傘。小さな少年。
「キッド…?」
その名を呼んだ瞬間の、男の瞳の煌めきは正しくそうだった。
「思い出してくれましたか!」
「…え?なんでここに…?」
「俺、言いましたよね?傘のお礼、ちゃんとするって」
「あ、あぁ…」
「コナンさんの、力になりたくて…今日から訓練の」
「ばっっっっっっっっっっか!!!!!」
残りの毛布を床に落として思いっきりキッドの頬を叩いた。クリーンヒット。油断していたのかまともにくらって頬を抑えて悶ていた。
「いいか!オメーは1年の義務訓練受けたら帰れよ!」
「で、でも」
「約束できねーなら今後オメーとのあの約束は守らん」
「…ぇ」
(約束!絶対絶対、コナンはーー)
(ーーはいはい、わぁったよ)
「それ、は」
「…」
「じゃ、じゃあお願いが、あります」
「聞くだけ聞く」
「名前…教えてください」
「工藤新一。」
「俺は、黒羽快斗です」
どうも、と言わんばかりにお辞儀してくるので俺も小さく返す。それでもなかなか怒りというものは収まらないらしくムカムカしていた。俺の為に軍に入ったなど言われたら論外である。義務訓練の段階で本当に良かった。
「でも、じゃああと1年で工藤さんに隣りに居てもいい人間だって認めて貰えればいいんですよね」
「はぁ?オメーなぁ」
「では、また!」
ダダッと廊下を走って小さくなってゆく背中を唖然と見送った。周りには毛布が散乱しているし。キッド…黒羽快斗は思い出してみればたかだか3時間程一緒にいただけの関係で。それが彼からしてみればそれなりに大きな出来事だったらしいのも驚いた。ぐちゃぐちゃの毛布に手を伸ばし、たたみ始める。酔いなんか完全に冷めた。部屋に戻れば、出たときと何も変わらない。
「お、工藤」
「わり、遅くなったな」
カチャ、と窓の開く音がした。もぞりと2つの布団が動く。
「黒羽帰ってきたんか?」
「はぁー…、訓練兵が勝手に出歩いてたなんてしれたら…」
「わり、黙っててくれな!」
「ご機嫌ですね。噂の恩人に会えたんですか」
「…なんでわかった」
「そりゃ、お前さんがそんな反応するの例の恩人関連位や」
ぎゅうぎゅうの3人部屋へ帰ってきた快斗はいつになく機嫌が良かった。やっと会えたのだ。思わずポーカーフェイスも忘れていた。
「…仕方ないだろ、8年ぶりだぜ?」
そう、思い出してもらえなくて当たり前。あれからもう8年も経っていた。でも、覚えてては、くれた。
「しかも相変わらず美人だった」
「はいはい。良かったなぁ」
「で?お名前は聞けたんですか?」
ニヤリとニヒルな笑みを浮かべて快斗は告げる。
「工藤新一さん」
「くっ、工藤さん!?」
「なんや男やったんか」
2人の反応にまぁまぁ満足して、フフンと喉を鳴らす。この広い軍基地の中で必ず探し出す覚悟はしていたが、初日に見つけられるとは運がいい。
「工藤新一さんといえば、優れた作戦指揮と頭脳。勇敢な行動で有名人ですからね…」
「そうなんか。えらいヤツと知り合いだったんやな、黒羽」
「…まーな。……しかし勇敢な行動、ねぇ…」
「ん?何か言ったかい?」
「いいや?それより、就寝時間過ぎてるし寝ようぜ?」
「せやせや!疲れたわ」
…あの人は相変わらず、自分の事は二の次らしい。明日起きたら本気を出して訓練にあたらねば。追いつかなくては、工藤さんに。隣りに居てもいいって思ってもらえるように。…守れるように。
ここまでしか書いてなかったですわ〜…(゜∀。)