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    kaogaiina_

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    一生終わる気がせんやしきみの幼少期の話。めっちゃショタ。ずっとショタ。捏造しかない

    #やしきみ

    ※未完 やしきみ「りとる・めもりー」 こつんと道端に転がる石ころを革靴の先ではじいて、おれは唇を痛くなるほど噛みしめる。

    なーにが君嶋家のおぼっちゃまだ! 君嶋家の人間だからっておしとやかにしろなんて理不尽だし、大体おれはまだ小学一年生なのに。小学一年生なんて、遊びたい盛りに決まってる! もうヤダもうヤダ! 爺やも母さんも父さんも、みんな嫌いだ。 
    後先考えずに飛び出してきた家を背におれはぽつりぽつりと歩を進める。帰宅後すぐに母さんとけんかになったせいで、ランドセルはまだ背負ったままだった。
    ピアノのお稽古も、お花のお稽古も、お筝も日本舞踊も、全部嫌いなわけじゃない。でもちょっとくらい自由な時間が欲しいと思っても罰は当たらないと思うのだ。なぜなら俺はまだ小学一年生だから。歩道のわきの小石にイライラをぶつけるように蹴り飛ばした。
    道なりに歩いていると、反対方向の歩道に母親に連れられた和服の男の子が歩いていた。太陽に反射する金髪がキラキラと輝いていて、思わず足を止めて見惚れてしまう。そういえば、日本舞踊の教室に、あんな子がいたような気が……する? あの子はいつも母親と一緒だったけど、おれは母さんが来たこと一回もないな。
    ちくりと痛んだ心に涙が出そうになるのをこらえてまた歩き出す。母さんも父さんと一緒に同じ病院で働いているから、忙しいのは当たり前で、習い事を見に来る余裕なんてないのはわかってる。でも例えばちょっとくらい、今日のお稽古はどうだったとか、次の発表会の日はいつとか、聞いてくれてもいいと思う。発表会には行けないから聞かないんだろうけど。
    今日だって本当は授業参観だった。クラスで親が来ていないのは俺だけ。今朝母さんは必ず行くと約束してくれたけれど、最後までその姿が教室に現れることはなかった。家に帰って聞いたら、急患が入ったと言われた。
    仕方のないことだってわかっている。医者というのは、とうといお仕事なのだと爺やが繰り返し言っているのも理解できる。それでも、他のクラスメイト同様に俺にとっての母さんは一人だけで、本来なら俺だけの母さんなのに。

    ぱたりと足を止めて、ランドセルのショルダーをぎゅっと握りしめた。目の端からじわりと熱いものが滑り落ちないように、強く強く握りしめる。泣いちゃだめだ。男の子だから、こんなことで泣いちゃダメなんだ。おれは、君嶋家の男の子だから、

    「あっ! ねえ! 君!」

    その時突然背中にかけられた声に、怪しみつつふわりと振り返る。ぎゅっとランドセルのベルトを握りしめたまま後ろを見れば、先ほどの和服を着た男の子が手に何かをもってこちらに走り寄ってきた。
    いそいそと駆け寄ってくる少年は、おれの目の前で身に着けていた紺色の袴を踏みつけてよろめいた。アスファルトに顔を打ち付けそうになる自分より少し小柄な体を、両手を広げて慌てて受け止める。

    「……だいじょうぶ?」

    飛び込んできた香りは爽やかな畳のにおいがした。胸にうずくまるクリーム色の髪が風になびいてふわりと揺れて、ゆっくりと綺麗なお星さまの瞳がこちらを覗いている。男の子は俺を一度見ると、ほおを緩ませて穏やかに微笑んだ。

    「ありがとうございます。おかげで助かりました」

    同じくらいの年齢で、俺より少しだけ身長が小さい程度なのに、その子はわざわざ敬語を使って話しかけてきたのが印象的だった。クラスメイトでも、敬語を使ってくる子なんていない。

    「これ、さっき落したのを見かけて」
    「あ……」

    少年の手に握られていたのは手ぬぐいだった。夏の木の葉っぱのように明るい緑色で、氷の結晶みたいな柄が一面に描かれている手ぬぐい。日舞のお稽古に行くときに必ず母に持たせられていたものだ。

    「あ、ありがと……」

    白い手のひらにちょこんと乗るそれを受け取ると、目の前の少年の目が今度はお月様みたいにまん丸だった。心の中を見透かすような目に思わず後ずさる。

    「えっと、なあに……?」
    「かなしいことでもあったんですか?」
    「え?」
    「だって、涙が」
    「……別に泣いてなんかないもん」

    その言葉に内心慌てて、けれどそれを気が付かれないようにむっとして唇を尖らせる。男の子は他人に泣いているところなんて見せてはいけないのだ。
    でも、少年はお月様のような瞳をにっこりと細める。その微笑みがあまりにも綺麗で、まるで昔読んだ聖書のマリア様みたいだと思った。

    「君は、親御さんにとても大切に思われているんですね」
    「え……?」

    少年の口から出てきた言葉はとても意外なものだった。そんな、どうして今あったばかりの彼が、俺の父さんと母さんのことがわかるだろうか。

    「……そんなことないよ。父さんも母さんも忙しいし、君のお母さんみたいに俺の習い事を見に来てくれるような人じゃないから」
    「確かに多忙でなかなか君の習いごとを見に来ることは叶わないかもしれませんが、それでもちゃんと君のことを思っていると思いますよ。その証拠がこの手ぬぐいです」

    少年は俺が握りしめていた若草色の手ぬぐいを指さす。そして自分の懐からも全く同じ手ぬぐいを取り出した。

    「ほら、ぼくとおそろいでしょ?」
    「ほんとだ……」
    「この柄には、子どもの成長を願う意味が込められているそうですよ。柄のもとになった葉っぱさんの成長がとてもはやいことからつけられたそうです。それにほら、君の名前がわざわざ刺繍されている。……きみしま、たく、くん?」
    「読めるの!?」

    びっくりした。だってそれはアルファベットで刺繍されていたのだ。子供に読めるはずがないのに、なんでアルファベットで刺繍するんだ、なんて母さんが縫っている隣で思っていたから、俺以外に読める子に出会ってびっくりする。
    目の前の少年は俺の言葉に可笑しそうにくすくすと笑って頷いた。

    「うん。よめますよ。ぼくもお母さんにおしえてもらったんです」
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