髪を切る 父に憧れていた。高潔で聡明。名刀・狩魔を振えば悪をたちまち断ち切る腕。
そんな父の背中を亜双義一真はずっと見ていた。大日本帝国の警察として悪漢を捉える姿も、少ない休みを幼い自分のために使い稽古をつけてくれていた姿も、大好きだ。
だから、大英帝国へ旅立つ、そう決まった日は誇らしい気持ちの奥底に寂しさが潜んでいた。
「一時の別れだ、一真。また会える日を楽しみにしている。達者でな」
父を笑顔で見送ったあと、一筋、大きな瞳から涙が溢れてしまって、母上に慰めてもらったのだ。
離れ離れになっても亜双義の憧れは絶えず続く。いつか狩魔を身に帯びるその日、恥じぬことのないように日の出前に起きて鍛錬を始める。稽古は刀にとどまらず、弓道、柔術も身につけた。
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