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    七海紗綾

    @minana0730

    とっくの昔に成人済。
    何十年かぶりにお絵描きとか物書きしています。
    どちらも今でも勉強中。

    この世界に私を呼び戻した戻したツイステすごい。(何目線?)

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    七海紗綾

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    ※ラギ監、NRC時代
    ※体調不良ラギ
    ※ばあちゃんは希望的捏造

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    ##ツイステ
    ##ラギ監

    一緒にお風呂に入りたいラギ監シリーズ13「ラギー先輩…どこへ行くんですか?」
    「どこって…バイトしに行くんスよ。」

    頭がぼーっとする。
    地面が…ゆがんで見える。

    「こんな状態でですか?!」
    「これくらい大丈夫ッスよ。なんてことない…。」

    ユウくんの匂いがすぐ近くにあって、そこでオレはユウくんに支えられていると気づいた。
    いつもはよく通る声も、なんだか遠くに聞こえる。

    「ダメです!今日はバイト休んでください。連絡は私が入れますから、ラギー先輩は寮に戻って」
    「だから、大丈夫だって…。」

    のぞきこんできた顔が、今までに見たことがないくらい目がつり上がっていて。
    ユウくん…そんな顔もできたんスね、なんて呑気に思う。
    けど今は、ほっといて欲しい。
    オレはバイトに行かなくちゃ…。

    なんてのは、次の瞬間、耳を突き破るほどの大声に止められた。

    「病人は大人しく寝てなさあああああい!!!」



    あー…おっかねぇ。
    ユウくんを怒らせるとああなるのか…。
    もう絶対怒らせないようにしよう、ってオレは心に誓う。
    って…まだ怒ってるみたいだけど。

    「えっと…ユウくん、怒ってる?」
    「…………。」

    少し離れたところから、無言で睨み付けてくるユウくん。
    そんな顔したってかわいいだけなのに。
    …てか、ユウくんは怒ると黙るタイプなんスね。

    「あー…えーっと…ご、ごめんね。」
    「…………。」

    ちなみに今、オレたちがいるのはオンボロ寮。
    オレはユウくんのベッドで一眠りして、大分体調も良くなったところ。
    なんでサバナクロー寮じゃなくて、オンボロ寮なのかって?
    あの後、サバナクロー寮へ強制的に連れて行こうとするユウくんに。

    「オンボロ寮がいいッス…。」

    と冗談まじりでオレがおねだりしたからだ。
    ユウくんはしばらくオレを見つめて。

    「…大人しく休むって、約束してくれますか?」
    「えっ?あぁ…うん。約束する。」

    断るのかと思いきや、その気になればすぐに破れるような約束をしてきた。
    …いや、あの雰囲気じゃ破る気になれないけど。

    「それなら…オンボロ寮に行きますよ。」

    ユウくんは不機嫌さを全く隠すことはせず、オレをぐいぐい引っぱって。
    オンボロ寮にたどりつくと、自分のベッドへぽぽーいと放り投げるようにして強制的に寝かしつけた。
    一応オレ、病人なんスけど。…わりと雑に扱われるんスね。
    いや、怒らせたから…か。

    「私はバイト先に連絡入れますから、ラギー先輩は寝てくださいね。」

    今日のバイト先はモストロラウンジだったから、きっとこれからアズールくんに連絡するんだろう。
    パタンっと閉まったドアの向こうで、ユウくんの話し声が聞こえる。

    ユウくんの布団でぐるぐる巻きにされたオレは、なんか複雑な気持ちだった。
    体調は確かに悪くて、頭もぼんやりはしてるけど。

    …何をしても、ユウくんの匂いがする。

    ユウくんの部屋なんだから当たり前だけど。
    目を閉じれば、ユウくんに抱きしめられているような、あったかさと香り。
    かすかに聞こえるユウくんの声。
    …なんか、すごく…安心する。
    オレのまぶたが重くなるまで、そう長い時間はかからなかった。


    次に目を開けた時には、大分気分もスッキリしていて。
    体を起こせば、無言で仁王立ちして睨んでくるユウくんがいた。
    ちらっと見えた窓の外はすっかり暗くなっていて、思ったより長い時間寝ていたことを告げる。
    気まずい雰囲気の中、色んな言葉をかけてみたけど…状況は変わらず、ユウくんは黙ったままだ。

    「あ…オレ、外泊届け出してないし…体調も良くなったから、帰るね。」
    「………っ!」

    オレがベッドから降りようとすると、ユウくんはすごい勢いでこちらに近づいてくる。
    反射的にまた怒られる、と思ったオレは少しあとずさって身構えた。

    「ゆ、ユウくん。ちょ…!!」

    ぎゅっと目をつぶったオレに、怒声や衝撃はいつまで経っても訪れず。
    かわりにふわっと抱きしめられた。
    一瞬何が起こったか分からず、頭に「?」を浮かべていると、ちゅっとおでこにキスをされる。
    え、待って。本当に何が起こってるの?
    閉じた目をゆっくりと開ければ、そこには心配そうな顔をしたユウくんがいた。

    「熱…下がったみたいですね。」
    「は?…え?」
    「良かった…。」

    心底安心したという声で言い、ユウくんはもう一度抱きしめてくる。
    あれ?…もう、怒って、ない?
    と、油断したオレがバカだった。

    「ラギー先輩。」
    「はい!」

    今日何度目かのユウくんの怒った顔。
    自然といい返事が口から出る。
    ユウくんは一度目をつぶると、オレにしっかりと目線を合わせた。
    すうっと息を吸うと、いつもよりゆっくりと、重みをもって言う。

    「もっと自分を大事にしてください。」
    「…へ?」

    てっきり罵られるのかと思っていたから、マヌケな声が出てしまう。
    自分を…大事に?

    「ラギー先輩は優しすぎるんです。人のことは気にかけるのに…自分のことには無頓着すぎます。」

    そんなことはない、と言いたかったけど。
    今日の行動を思い返したら、何も反論できなかった。

    「それに…ラギー先輩に何かあったら…私…。」

    ユウくんはすっと視線をそらしてうつむいた。
    その頬に一筋の涙が伝う。
    オレは無意識に、ユウくんの頬へと手を伸ばした。

    「ごめん…。」
    「私っ…怒ってるんですよ?」

    きっとユウくんは怒っているだけじゃない。
    こんなに震えて…。
    オレはユウくんの両頬を包むようにして上を向かせ、目線を合わせた。

    「…ごめんなさい。」
    「………っ。」

    オレの言葉に、ユウくんの目からぽろぽろと涙がこぼれていく。
    ユウくんは震える両手をオレの手に重ねる。

    「もう…無茶しないって、約束してくれますか?」
    「うん。約束する。」
    「絶対、ですよ?」
    「うん…。」

    ユウくんは自分のことを泣き虫だと言っていた。
    泣くなとは言えない。けど、どうしても泣くなら、嬉しい時に涙を流して欲しいと思っていた。
    けど、このユウくんの涙は…。

    ―いいかい、ラギー。
    大事な人ができたら、その人のためにも自分を大事にするんだよ。

    ふといつかばあちゃんに言われたことを思い出す。
    その時は全然意味が分からなかったけど。
    …今、ようやく分かった気がする。

    「ごめん、ユウくん。…ありがと。」

    ユウくんの涙を指ですくいながら言えば、くすぐったそうに目をつぶる。
    何度かぱちぱちとまばたきを繰り返した後、ユウくんはすっと目をそらした。

    「いえ…私こそ。病人相手に怒鳴ったりして…すみませんでした。」
    「あー…あれは…。かなり効いたッス。」
    「ごっ、ごめんなさい!」
    「シシシッ。いーッスよ。おかげで調子良くなったし。」

    いつもみたいに笑って見せれば、ユウくんは安心したように微笑んだ。

    「まだ本調子ではないと思うので…外泊許可をレオナ先輩からもらいました。今日はここで、ゆっくり休んでください。」

    いつの間にレオナさんへ連絡をしたのか。それに…なんて説明したのか。
    これは帰ったらからかわれるなと思いながらも、オレはユウくんに促されるままに再びベッドに横たわる。

    「何か食べるものを作ってきますね。あと、タオルも持ってきますから。ちゃんと大人しくしててくださいよ。」
    「シシシッ。はぁーい。」

    ユウくんはオレに布団をかけると、ぽんぽんっとあやすようにたたく。
    目を合わせれば、ふっと微笑んで。
    それが誰かに重なった。

    「ユウくん…母ちゃんみたい。」

    母親の記憶なんてほとんどないけど。
    いたら…こんな風かなって。
    けど、オレのその言葉はユウくんにはお気に召さなかったようで。
    目を見開いた後、口をとがらせてしまった。

    「私、ラギー先輩のお母さんじゃなくて…」

    彼女…です。

    ぼそっと言ったユウくんの言葉は、聞き逃してしまいそうなほど小さかったけど。
    オレの耳にはきちんと届いていて。
    あ~そんなかわいいこと言われたら…また熱出そう。
    当の本人も言ったことが恥ずかしくなってきたのか、顔がみるみるうちに赤くなっていく。

    「あれぇ?ユウくんも熱出てきたんじゃないッスかぁ?」
    「…もぉーっ!大人しくしててください!」
    「シシシッ。はいはーい。」

    ぷりぷり怒りながら出て行くユウくんをぼんやり眺めて。
    オレの意識は夢の中へと入っていった。


    …ねぇ、ばあちゃん。
    オレ、本当に大事な人ができたッスよ。
    絶対に手放したくない、大事な人が。





    ~番外編~
    子ラギーとばあちゃん、ある日の会話
    「オレはばあちゃんのことが大事ッス!」
    「シシシッ。私もラギーのことが大事だよ。けどねぇ。」
    「…?」
    「…まぁまだしばらくは、ラギーに大事にしてもらおうかね。」
    「…??」
    「シシシッ。お前もいつか、本当に大事にしたい相手ができたら分かるさ。」
    「???」
    「その時はきちんと紹介しておくれよ。」
    「…?わ、わかったッス!」
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