金テン×採掘者✂️🧲華やかなゴールドラッシュの時代は幕を閉じ
金に飢えた人々が『もしかしたら出てくるかもしれない』という砂金ほどの願いで集った金掘り達は
今日も今日とて輝くゴールドに巡り会えず
見慣れた土を掘り進めていた。
「はぁ…他に移るにしても情報が舞い込んでこないし、ここ以上に出る話がない場所に無策に行くのはちょっとな…」
土色の辺りを一景しスコップを地面に刺すと首元に巻いたチェック柄のスカーフで額の汗を拭いながら平ための岩に腰を下ろす
ここが黄金の香りに包まれる日は来るのだろうか─
喉の乾きを覚えつつも灰色の髪色を持った珍しい1人の真面目な採掘者は珍しくその日そこで寝こけてしまった。
ドゴンッガラガラガッガッガッ
遠くから聞こえる音にしては大きな騒音に採掘者は目を覚ます。
目を開けたのに暗い。
「っ、え…、え?」
視覚嗅覚感触は感じるもののまだ自分は眠っているのかと、夢だったら幸せだったのかもしれないと無意識に震える身体を両腕で擦りながら
眠る前は坑道だった道を辿ろうとする
「……どう、すれば」
奥から毒ガス等の爆発が起きた際、二次被害を考えて緊急の爆弾が設置してあり、今回それが使われているということは戻る道はずーっと塞がれている可能性が大きい。
「毒…いや備え付けの爆弾の爆発………」
後者は少しの望みがあるが前者はもう助からない。
誰だって毒を浴びてまで人助けなんかしないのだ。
「………………」
暗闇に慣れ始めた目で振り返ると奥へと進む道は綺麗に見えてきた。
壁に震える手を置いたまま上の瓦礫が落ちてこないかひやひやしつつ進んでいく
すると奥から緑色の光が鈍く刺してきた
「ひっ…!!!」
毒かもしれないと一瞬足を止めたけど助けを縋る偏った思考は「自分以外の誰かの光」か「抜け道」だと思って近づいてしまった
ギョロリ
自分の体以上もあるその大きな緑色に怪しく光る目はこちらを凝視してにたりと笑う
あまりの見たことの無い恐怖に尻もち着いて立ち上がれなくなってしまった採掘者は震える腕で頑張って後退しようとしていたが目玉からすれば
小動物がその場で震えてるだけだった。
「あ……ぁ……」
ズズズと目玉が壁から段々と出てこようとしてるのが分かった。毒よりも酷い死に方を迎えそうな事を悟り近づいてくる圧迫感に背中叩かれる様にして這いつくばり転げ落ちつつどんどん先へと向かっていった
殺されてしまう。
必死になって化け物から逃げた体はズタボロで掘る仕事をして以来、変だった自身の呼吸音がやけに広い洞窟に響き渡る。
ぬめりけある化け物の音が遠ざかった事を安心材料に肺を落ち着けたいが、この中の痛みだけはどうにも出来ない。
苦しさのあまり無意識に涙だって零れるのだ
涙で霞む向こう側に金色の、とてつもなく大きな金塊がそこにある気がする
どれ程恋焦がれただろう。
もう全然言うことを聞かない身体を無理やり引き摺って捕まりやすそうな箇所を掴むとそのままそれを
抱き込んで涙を流しながら目を細める
「……ぼくの、ぼく、だけの─」
黄金の谷、黄金の川。
それをバッグに目の前の金持ちたぬき親父に僕はふんぞり返っていた。
外から来た黄金掘りだからって雇い主のくせして散々いじわるされていたのだ!
だけどもうこれからはさせないぞ!
僕はお前と同等、いや、それ以上の人間になってしまったのだから!
「…ふふ、小さい夢」
なんだと!?お前には分からないんだ!!
生まれだけで全てドブネズミやゴミを見るような目で卑下されて酷い意地悪されたり理不尽に殺される僕らの階級なんて!!
「そうですね。私は人間にまず拘りないですから」
……?。そんな高価な服を着て何を言ってるんだ?
「見た目で判断するだなんて可愛らしいですね。服だけで、私の全てが分かるのですか?」
目の前のそれはニタリと笑いながら顔を近づけてくる。
圧がすごくて咄嗟に目を逸らすとそのまま抱き上げられて驚きの声が漏れ落ちないようにしがみつくとそのまま頬にキスされた。
ぱちくりと採掘者が呆気に取られていると
男は髪に隠れていた筈の耳元に無い唇を当てて吐息混じりに囁く「気に入りました」
あ、あ、あ.........たべられる。
目を覚ますとクチュクチュと直で響く音に起こされる。
「?、ぁ...な..ぁに..」
覚束無い思考と霞む目線だけを動かし体を見るとキレイなキレイな黄金色の液体が自我を持つように自分の服の隙間を通り抜けて身体に触れ
〚僕が黄金の中に取り込まれたみたいだ。〛
と微笑みそうになったその瞬間耳からずるりと離れて
顔らしきものがこちらを見すえ額同士をくっつけた
「あながち間違いでは無いですよ」
濡れて冷えた筈の耳は熱くて
人間じゃないその顔も怖いはずなのに暗闇に1人でないことが嬉しくてきっとどうかしてたのだろう
採掘者は液体状のモノに取り巻かれ震える腕をそのまま彼の首に腕を回してキスを強請った。
「........」
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水気のある音が片耳を包み込んでいてとても安心する。
あ、......しなくなった。また1人なのか、暗い中で...
暫く不安に包まれていると体がふわりと持ち上がり、また同じ音が感触が再開すると離したくないぐらい安心して思わず強く掴んだ
まぶたの裏が赤くなってきて新しい風や陽の光が気持ちいいが
掴んだそれからそれの方が今は離したくなかった。