槌の音 なにもかもが上手くいかない。
影に覆われた大地、命をむしばむ闇の中を、松明の明かりを頼りに逃げ帰る……。情けない醜態を晒したことを、歯を食いしばって耐えながら。ローランは、這う這うの体で最後の光亭へと戻ってきた。
ローランの姿を、門番たちは遠巻きに見た。負け犬のような有様を笑っているのではと感じて、彼らの目を見ることはできなかった。冒険者たちに助けられたこと、それは本当にただただ『恥じ』で。
耐えがたい衝動が、何事もうまくいかない現実が。ただただ受け入れがたく、今すぐにでも酒に溺れてしまいたかった。ただ、それが情けない行為であることを、頭ではわかってしまっていて。
自分は何をしているのだろうと、目の奥が少しだけ熱くなる。うまくいけば、今頃は、バルダーズゲートで、あのロローカン導師に師事を受けて、立派な魔術師になっているはずだったのに。……、酒に溺れて、こんな場所で燻って、仲間すら助けられずに此処にいる。
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