亡くした一部ナタリーがドレッサーに目を向けると、ネイビーに金色の星が散らばる陶器が目に入った。小さな淡いピンクの化粧品達に囲まれているそれは、大きさもあり少し異質に感じた。
「わぁ、綺麗な瓶ね。お化粧道具を入れているの?」
「違うわ。…でも綺麗でしょ?忘れないように飾っているの。」
「なるほど、インテリアってことね!素敵だわ」
「…ありがと!それよりこの前ね…」
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忘れないように。毎日目に入るように。
化粧品なんて可愛らしいものは入っていない。
これは骨壷だ。
この中にはシルバの脚が入っている。
焼かれて脆くなり、ボロボロの白い塊と粉になった私の家族の一部が。
あの時、燃やされて無くなってしまう筈だったそれを、私はどうしても残していて欲しかった。
シルバが脚の切断を決めた後、完全焼却の同意書にサインする手を止めさせてらしくなく懇願した。
あいつは自分の脚なのにどうでも良いようで
「そんなに欲しいなら骨くらいアネキにやるよ」
といっそ不思議そうな顔をしたのだった。
それがとても…悲しかった。
当のシルバは新しい義足の事しか頭に無いようで、早く走りたい、動きたいと決断前のどんよりとした瞳が嘘のように能天気だった。
自ら死んでしまいそうだった少し前の姿に比べれば、良かったのだろう。
それでも私はどうしてもやるせない気持ちになるのだった。
手術を終えたシルバを見舞い、その後火葬場へ一人で向かった。
指定された時間までベンチに座って待つ。
火葬場には煙突があり、白い煙が空に登っていくのが見えた。
時間になり、シルバに書いてもらった委任状を渡すと骨を詰められた壷を受け取った。
蓋を開け中を除くと、バラバラになった骨が入っている。
思ったよりも軽かった。
少しだけ泣いた。
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これ以上あいつをこの壷に入れさせはしない。
私がシルバを、私の居場所を守る。