お前が幸せになるその日は近い 「あーあ、またこんなとこで寝ちまって…」
はあ、とラディはため息を吐くと机に突っ伏したまま寝てしまっているティファリアに手を伸ばす――がそれを止めたのはイーオンの腕だった。
「…ラディとティファリアは家族でこういうことも何度かあったのかもしれないが…だが、その、今は自分が彼女の、ティファリアの恋人だ。だから、その役目は自分に任せてはもらえないだろうか……」
そんなイーオンの言葉に一瞬面食らった顔をしたラディだったがそのあとふっと笑みを浮かべる。
「分かったよ、悪かったな。いつもの癖でついな」
「……いつもの癖、か。それは、仕方がないな」
「ああ、そうだ。だから許してくれ、今後はイーオンがいる時は任せるようにすっからよ」
「……ああ、分かった。では、自分はティファリアを運んでくる。」
そう言ってひょいと軽々ティファリアを横抱きするとそのままイーオンはティファリアの部屋へと向かって行ってしまう。その背中が消えたのを確認すると、深くラディはため息を吐く。
(……恋人、か。昔はあ~~~~~~んなにちっさかったっていうのによお)
それは後悔や妬みのような男としての感情ではなく親代わりとして、子を嫁に出してしまう時の父親のような心境だった。
「……今はまだ恋人、だけど……」
いつか結婚するのだろう。ラディの手を離れて真っ白なウェディングドレスに身を包んでイーオンの元へと溢れんばかりの笑顔で駆けだすティファリアの様子が瞼を閉じればすぐにでも浮かんでくる。
「……やべ、泣きそう」
涙をそっと拭いながら大切にしまっていた洋酒をラディは棚の奥から取り出す。
「こういう時は酒だよな!吞まなきゃやってられねぇ~!」
そんな言葉を叫びながら酒瓶を開けるラディだった。
-Fin-