お前との未来の契り 両親に呼ばれ家へと戻るとそこにはうちの両親だけでなく槐様、槐様の母上、そして黒雪までもがそこにいた。しかも黒雪は何故か槐様の隣に座っている。それに首を傾げつつ俺も席についた。
「…それで話とは?」
「ああ、それは二人からあるよ。黒雪、槐様」
名前を呼ばれ二人はぴんと背筋を正す。
「えっと…オレと槐…付き合って、るんだ…」
「なっ…」
驚く俺を他所に両親たちはニコニコと微笑んでるこの事実を以前から知っているような様子だった。
「タチの悪い冗談では…」
「違いますよ。私と黒雪は付き合ってます」
そう言って槐様は黒雪にしがみつくようにして言う。二人のことは仲が良いとは思ってはいたがまさか付き合ってるとは思わず頭が痛くなってきてしまう。
「…そうですか、槐様が決めたのなら俺は別に…」
「ふふ、良かったですね。黒雪」
「…良かった、と言っていいの?これ」
「いいんですよ」
にこにこと笑う槐様に根負けしたように困ったように黒雪は笑った。
「ーーで、話はそれだけじゃなくてさ。」
そして黒雪の言葉を続けるように槐様の母上が言葉を続けた。
「二人は本当に幼い頃から仲がよく、思っていたよりも長い時間付き合っているというの。だから、色々と考えまして二人が共にいるために、幸せになってもらうために、婚約者にしようか。と思って」
「婚約者…?!」
まさかそこまで話が飛躍していたとは思わず驚きの声を出してしまうが黒雪も槐様も嬉しそうだった。
「この話はどこまで…?」
「蝶兄、猿之助、伽羅、霞は付き合ってることは知ってるけど婚約者であることは知らない。知ってるのは今この場にいる人だけだよ」
「そう…なのか」
「別に隠してることでもないから言ってもいいよ、むしろ言って話を広めてくれた方が助かるって言うか」
そう言って黒雪は笑う。
「…黒雪」
「ん?」
「槐様を幸せにするんだぞ。でないと俺がお前をぶん殴る」
「おー、こわ。ま、安心しててよ。幸せにするってずっと前から決めてるからさ」
そう言って笑う黒雪に、目の前で楽しそうに笑う二人の様子にチクチク俺の胸は痛み出す。
(ーーああ、そうか。俺は、槐様のことが…)
そう気づいた時にはもうたくさんのことが手遅れなのだった。
***
「良かったですね、黒雪」
にこにこと笑う槐にぎこちなく笑みを返す。
「まあ…確かに結果的には良かったかもだけどさぁ」
確かに認めてくれたのは良かったし槐がオレのことが好きだって、オレたちが付き合ってるってことを月下兄に知らしめることができたのはよかった。
「黒雪…?」
「ああ、ううん…槐、オレのこと、好き?」
「勿論です。」
即答してくれる槐に思わず笑ってしまう。
「もうっ、なんで笑うんですか!」
「違うよ、嬉しくてさ」
槐の心が手に入るなら、槐のそばにいられるならなんだってよかった。だからお互いに同じ気持ちで思い合っている今が嬉しくて仕方ない。
「ね、槐。…キスしてもいい?」
そういえば槐は瞳を閉じて待つ。
そっとその唇に自分の唇を重ねる。それだけで嬉しくなってしまって、涙が出そうになってしまう。
「っ……」
「泣かないでください、黒雪」
「っ…」
オレの涙を拭う指が、手が優しくてオレは槐を抱きしめながらほろほろと涙を零した。
-了-